研究課題/領域番号 |
23592192
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松本 嘉寛 九州大学, 大学病院, 助教 (10346794)
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研究分担者 |
松本 和 岐阜大学, 医学部附属病院, 助教 (40422711)
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キーワード | 悪性骨軟部腫瘍 / 軟骨肉腫 / 肉腫幹細胞 |
研究概要 |
軟骨肉腫(Chondrosarcoma: CS)は、腫瘍性軟骨の形成を特徴とする悪性腫瘍である。化学療法・放射線治療に抵抗性で現在でも予後不良であるが、病態解明は進んでいない。本研究では、軟骨肉腫の悪性化機構を特に軟骨肉腫幹細胞に注目して解析し、軟骨肉腫予後改善のための新規治療法の開発を目指す。 前年度に引き続き、軟骨肉腫細胞株を用いた解析を行った。脱分化型軟骨肉腫よりより樹立された培養細胞株には多分化能をもつ幹細胞様の性質を持った細胞が含まれている可能性がある。本研究では、脱分化型軟骨肉腫(脱分化型CS)細胞株NDCS-1を用いて、Spheroid colony assayを行った。このassayにより、幹細胞様細胞が濃縮されると予想されるため、通常培養細胞群とspheroid assayを用いて網羅的遺伝子解析を行った。解析には、研究計画にて予定していたDNA microarray法を用いた。その結果、膜表面蛋白質であるS100A4が、spheroid形成に伴うことを見いだし、Real-time PCR法にても確認した。 軟骨肉腫臨床サンプルを用いた、免疫染色にても、脱分化型CSでS100A4が発現していることを確認した。これらの結果は、軟骨肉腫細胞の幹細胞性の維持にS100A4が関与していることを強く示唆している。さらに、microarray法では、S100A4以外にも、spheroid形成に伴い複数の遺伝子が発現上昇もしくは低下しており、引き続き今後の解析が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、細胞株を用いたspheroid assayの確立、さらに、それらを用いた網羅的解析を行うとともに、臨床サンプルを行った解析も開始した。いずれも、研究手法は再現性を持つ事が確認され、有用な結果も得られており、研究計画は順調に進捗していると判断された。
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今後の研究の推進方策 |
CS幹細胞における幹細胞性維持機構の解明を引き続き継続する。対照細胞とCS幹細胞様細胞との間ではS100A4が重要な働きをしている事が予想された。次年度は、S100A4を標的にlentivirusを用いた強制発現やsiRNAを用いた遺伝子阻害を細胞レベルで行い、細胞増殖能や分化能の検討を行う。また、マウスモデルを用いて、Xenograftを作成、標本よりmicrodisection法にて、脱分化成分と高分化成分を別個に細胞を採取、遺伝子解析を行う予定とする。さらに、臨床サンプルの検体の解析も症例数を増やして検討を続ける予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記研究計画で記載した、lentivirus, siRNA法などの分子生物学的な手法に必要な試薬購入費、microdisection法に必要な消耗品費、マウスモデル構築に必要な動物購入費などに研究費を使用するとともに、学会発表、論文校正料などにも使用予定である。
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