研究課題
軟骨肉腫(Chondrosarcoma: CS)は、腫瘍性軟骨の形成を特徴とする悪性腫瘍である。化学療法・放射線治療に抵抗性で現在でも予後不良であるが、病態解明は進んでいない。本研究では、軟骨肉腫の悪性化機構を特に軟骨肉腫幹細胞に注目して解析し、軟骨肉腫予後改善のための新規治療法の開発を目指す。前年度に引き続き、軟骨肉腫細胞株を用いた解析を行った。脱分化型軟骨肉腫よりより樹立された培養細胞株には多分化能をもつ幹細胞様の性質を持った細胞が含まれている可能性がある。本研究では、脱分化型軟骨肉腫(脱分化型CS)細胞株NDCS-1を用いて、Spheroid colony assayを行った。このassayにより、幹細胞様細胞が濃縮されると予想されるため、通常培養細胞群とspheroid assayを用いて遺伝子解析を行った。その結果、spheroid形成により、分化に伴い発現するType II collagenの発現が減少し、Type I collagenの発現が増加することを見いだし、Real-time PCR法にても確認した。さらに、これらの発現変化にはNotch経路が関与されている可能性が示唆された。Notch経路は、幹細胞性維持に重要であることが報告されており、CSの脱分化過程にても重要と予想され引き続き今後の解析が必要である。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、前年度に確立した細胞株を用いたspheroid assayを用いて、遺伝子解析を行い、軟骨肉腫幹細胞性維持にNotch経路が関与している可能性を見いだした。この結果は、軟骨肉腫脱分化メカニズムの解明に極めて有用な結果であり、研究計画は順調に進捗していると判断された。
CS幹細胞における幹細胞性維持機構の解明を引き続き継続する。次年度は、Notch経路に関与する分子を標的にlentivirusを用いた強制発現やsiRNAを用いた遺伝子阻害を細胞レベルで行い、細胞増殖能や分化能の検討を行う。また、マウスモデルを用いて、Xenograftを作成、標本よりmicrodisection法にて、脱分化成分と高分化成分を別個に細胞を採取、両検体におけるNotch経路の活性化の差異の検討を行う予定とする。
実験の進捗が順調であり、試薬などの消費量が予想よりも少量であったため、物品費に余剰が生じた。次年度の各種実験試薬、また論文作成に際しての校正費および投稿費に使用予定である
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
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