研究課題/領域番号 |
23592196
|
研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
村田 博昭 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員講師 (90360031)
|
キーワード | ビスホスフォネート / 軟部肉腫 / 放射線治療 / アポトーシス / 骨肉腫 |
研究概要 |
昨年までに線維肉腫細胞株(HT1080)に対して第3世代ビスホスフォネート(BPs)であるゾレドロン酸(ZOL)と放射線併用によりアポトーシス誘導効果が増強すること、ZOL投与24時間後に放射線を照射する投与方法が最も強い抗腫瘍効果があること、併用効果の機序は、AKTおよびERK1/2のリン酸化を、ZOLが抑制したためであることを報告してきた。今年度は併用効果の機序について放射線応答シグナルについてさらなる検討を行った。 HT1080に対して放射線単独照射群(R群)、およびZOL投与24時間後に放射線照射した群(Z/R群)を作製し、リン酸化AKT、ERK1/2等の蛋白を、経時的にウエスタンブロット法で解析した。AKTおよびMEKインヒビター投与24時間後に放射線を照射し、殺細胞効果をフローサイトメーターで解析した。コントロール群、ZOL単独投与群、R群、Z/R群でNFκBの転写活性をルシフェラーゼレポーターアッセイ法で解析した。 結果はR群では放射線照射1時間をピークにAKTおよびERK1/2はリン酸化され、24時間以内に非照射群と同等の発現量になった。また、Z/R群ではこれらタンパクのリン酸化が抑制された。AKTおよびMEKインヒビター投与後に放射線を照射することで、Sub-G1期の細胞比率は、各々の単独投与群と比較して有意に増加した。R群では照射後1時間でNFκBの転写活性の亢進を認めたが、Z/R群では転写活性は抑制された。 今回の結果から、放射線照射により細胞生存シグナルの一部が活性化される放射線応答シグナルに関与する蛋白のリン酸化やNFκBの転写活性を、ZOLが抑制することが併用効果の機序の一つであると考えた。軟部肉腫細胞に対する放射線と第3世代BPsの併用効果の機序に関する詳細な報告はなく、有効な治療法の1つになると考える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ビスホスフォネートと放射線療法の併用効果の検討についてはin vitroについては計画通り進み結果も得られている。しかし、in vivoの検討に関しては実験動物への腫瘍細胞導入が難しく現在試行検討中であり、安定した導入が得られれば併用効果の局所、転移評価を行う予定である。 ビスホスフォネート含有徐放剤を用いた骨軟部肉腫、癌腫に対する抗腫瘍効果の検討についてはおおむね結果が得られている状況で組織学的評価など詳細な検討を行っている。
|
今後の研究の推進方策 |
ビスホスフォネートによる抗腫瘍効果を高める方法として局所濃度を高めるためにビスホスフォネート含有徐放剤を用いて相乗的な抗腫瘍効果を検討する。徐放剤として、骨セメント(発熱性/非発熱性)、ハイドロキシアパタイト(HA)、ゼラチン粒子を用いる。ビスホスフォネートをこれらに含有させ、まずin vitro での抗腫瘍効果を腫瘍細胞の増殖変化を検討する。さらにマウスに腫瘍細胞を移植した後これらの徐放剤を挿入し腫瘍の増殖抑制効果を組織学的にも検討する予定である。対象とする細胞は骨軟部腫瘍のみならず癌腫など様々な悪性腫瘍に対しても検討する。特に癌腫に対して効果が判明すれば転移性骨腫瘍に対する局所治療としても有効となると考える。 また、免疫抑制ラットあるいはラビットの脛骨骨髄内に腫瘍細胞を移植する方法を確立し、ビスホスフォネート含有徐放剤と放射線の併用することにより強い抗腫瘍効果が得られるか検討し、局所のならず転移巣への抗腫瘍効果の影響を検討していく予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
ビスホスフォネート含有徐放剤を用いた骨軟部肉腫、癌腫に対する抗腫瘍効果に関する研究では、含有する材料としてはハイドロキシアパタイト(HA)、2 種類の骨セメント(硬化時に発熱有、無)、ゼラチン粒子を用い、ビスホスフォネートを様々な濃度で上記材料に各々含有させたものを作製し、細胞株(骨肉腫、軟部肉腫、癌細胞株(肺、腎))をかえて各々増殖抑制効果、殺細胞効果、細胞周期、アポトーシス関連タンパクの変化を解析する。さらにこれらの効果を実験動物を用いてin vivoで検討を行う予定である。実験動物に関してはラットより大型のラビットを使用することも検討している。 以上の実験に対して実験器材、試薬、抗体、実験動物などの購入費として使用する予定である。 また、研究成果の発表と、英語論文作成のための支出としても研究費の使用を予定している。
|