研究課題
昨年までに線維肉腫細胞株(HT1080)に対して第3世代ビスホスフォネートであるゾレドロン酸(ZOL)と放射線併用により、アポトーシス誘導効果が増強すること、ZOL投与24時間後に放射線を照射する投与方法が最も強い抗腫瘍効果があること、放射線照射により細胞生存シグナルの一部が活性化される放射線応答シグナルに関与する蛋白のリン酸化やNFκBの転写活性を、ZOLが抑制したことが併用効果の機序であったことを報告してきた。しかし、ZOLは投与後速やかに骨へ移行するために血中半減期は短く、また血中最大濃度も低いことが報告されており、臨床応用時には軟部肉腫へ薬剤が十分に移行せず、その結果放射線との併用療法が不十分となる可能性がある。これらを踏まえ、今年度は軟部肉腫に対するZOLの抗腫瘍効果を、低濃度かつ短い暴露時間で検討し、またin vivoでのZOL単独の抗腫瘍効果を検討した。HT1080および滑膜肉腫細胞株Syo-1に対して2μMのZOLを2時間暴露した後、培養液を交換し、24、48、72時間後にcell countで解析した。in vivoではヌードマウスの皮下にHT1080の細胞を移植し、移植2週経過後からZOL80μg/kgを週に1回、または3回腹腔内投与し、コントロール群(CT群)と腫瘍体積を比較した。結果はin vitroにおいてZOLによる増殖抑制効果に有意差を認めなかった。in vivoでもCT群と治療群間に有意差を認めなかった。今回の結果から、軟部肉腫に対するZOLの直接的な抗腫瘍効果は、静脈内投与のみでは不十分であり、ドラッグデリバリーシステム等の開発が必要であると考えた。
すべて 2013
すべて 学会発表 (2件)