研究課題
本研究では整形外科領域の骨髄炎などの感染症における細菌動態や病態解明ならびに治療効果、さらに新たな抗菌性生体材料の開発を目的とした。具体的に実施した研究は、①安定した細胞株の作製、②マウス骨髄炎モデルの確立、③抗菌性生体材料の作製、④抗菌性生体材料の機能評価、⑤抗生物質の分子標的治療の確立であり、そのすべてにおいて仮説と予備実験に基づいた結果を得ることができた。①にて安定してルシフェラーゼ発光を持つ細菌細胞株をクローニングした後に、安定した再現性を持つマウス骨髄炎モデルとマウス浅殿筋モデルの作製に成功した。マウス浅殿筋モデルを使用し⑤の抗生物質の分子標的治療実験を実施し、マウスでは良好な治療効果が得られた。少量のバンコマイシンのリポソーム内への内包化により、MRSA感染巣の集積をイメージング法にて確認し、細菌の消失すなわち感染の治癒が得られた。一方でマウス肺炎モデルなどのほかの感染モデルでは一定の効果のみ見られ、投与法に課題を残した。一方、③と④においては、3年間に渡る研究結果より抗菌加工過程において硝酸銀濃度の違いによりインプラント表面に異なる濃度の銀イオンをコーティングできることが可能となり、平成25年度の最終年は臨床応用へ向けた実験を行った。具体的には脊椎固定術で使用されている実際の合成樹脂ケージに抗菌加工を施し、その強度と毒性を調べ、その安全性が確認できた。現在、医療材料を扱う2社において臨床応用へ向けた既存医療材料(人工骨と合成樹脂)に対する抗菌加工の研究の前段階まで進行している。以上のように本研究3年間の研究成果は今後の臨床応用へ向けた大きな意味合いを持つ基礎的データとなった。引き続き、日本発の新規抗菌インプラント、新規感染予防・治療を臨床現場で実現したい。
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