研究課題/領域番号 |
23592204
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森崎 裕 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (30508099)
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研究分担者 |
田中 栄 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (50282661)
三浦 俊樹 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (20376479)
門野 夕峰 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (70401065)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 骨・軟骨代謝学 |
研究概要 |
本研究の目的はマウス抗RANKL(receptor activator of NF-κB ligand)抗体による骨吸収抑制作用機序をin vitroおよびin vivoで明らかにするとともに、抗RANKL抗体と既存の骨粗鬆症治療薬との相互作用の検証を通じて、破骨細胞分化制御機構の解明を目指す。具体的にはマウスモデルにおいて、RANKL中和の生体に及ぼす影響を詳細に明らかにするとともに、さまざまな骨粗鬆症治療薬と抗RANKL抗体の相互作用を検討することである。 本研究は今年度、以下のサブテーマについて遂行している。1)抗RANKL抗体による破骨細胞分化抑制機構の解析:マウス骨芽細胞と骨髄細胞との共存培養によって形成された破骨細胞分化培養系細胞を用い、得られた成熟破骨細胞を、抗体を添加しない対照群及び抗RANKL抗体を濃度別に添加した抗体投与群に分けて培養し、破骨細胞の形態学的特徴、生存能、分化、機能を評価した。その結果、抗RANKL抗体を1~10μg/mlの濃度で添加したところいずれにおいても破骨細胞形成が見られず、抗RANKL抗体は破骨細胞文化を強力に抑制することが示唆された。2)抗RANKL抗体が成熟破骨細胞に及ぼす影響:抗RANKL抗体が成熟破骨細胞の生存能に及ぼす影響を検証する。まずコラーゲンゲルでコートしたディッシュ上で既述の破骨細胞共存培養を行い、成熟した時点から抗RANKL抗体を濃度別に添加し、一定時間後(0, 6, 12, 18, 24時間)に、生存破骨細胞数をそれぞれ計測して生存率を算出し、抗RANKL抗体の破骨細胞に及ぼす生存能を評価したところ対照群と有意な差はなく、抗RANKL抗体は成熟破骨細胞の生存能には影響を及ぼさない可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り、本年度はin vitroでの抗RANKL抗体の作用を詳細に解析することができた。
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今後の研究の推進方策 |
抗RANKL抗体による破骨細胞分化抑制機構の解析 抗RANKL抗体による骨量増加、骨密度上昇作用の生体内での経時的変化を詳細に解析する。抗RANKL抗体をマウスに投与し、投与開始前を基準として一定期間経過後、各時点でX線検査、骨密度測定、血清学的検査、組織学的検査を行い抗RANKL抗体の経時的な作用の変化を解析する。血清学的検査は、骨吸収マーカーとしてCTx(C-terminal telopeptide crosslink of type I collagen)やTRAPの血清濃度を測定する。組織学的検査では、各時点のマウス骨組織を組織切片を作製する。作製された切片は破骨細胞が同定できるようにH-E染色に加えTRAP染色を行う。これらの実験により抗RANKL抗体の持つ作用過程の詳細が解明できる。また閉経後骨粗鬆症モデルとして卵巣摘出マウスを作成する。このマウスに対し抗RANKL抗体を投与し、投与開始から経時的に骨吸収作用を骨組織のX線検査、DXAによる骨密度測定、組織学的検査、血清学的検査を行いその推移をとらえる。また相互作用をみる既存の骨粗鬆症治療薬の中からは、破骨細胞による骨吸収作用を介して骨形成促進作用を発揮するとされているPTH(Black DM et al. : N Engl J Med, 2003)との相互作用の解析を通じ、破骨細胞による骨吸収制御機構の包括的な解明を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
既に我々は、in vitroでの破骨細胞実験系、分子生物学的な解析手法に関しては十分な知識と経験を備えている(Tanaka et al. Nature 383: 528-531, 1996)。また既に上記の一連の実験を行うのに十分な機器、設備が備わっている。したがって研究費の用途は消耗品が中心である。本研究は細胞株を用いた実験では代用できず、生体マウスからの試料採取が必要となるため、マウス飼育費用がかかる。
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