研究課題/領域番号 |
23592206
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
神野 哲也 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 講師 (90343152)
|
研究分担者 |
辻 邦和 東京医科歯科大学, 歯と骨のGCOE拠点, GCOE拠点形成特任教員 (20323694)
宗田 大 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (50190864)
関矢 一郎 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 寄附講座教授 (10345291)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 変形性関節症 / メカニカルストレス / 卵巣摘除 / 動物モデル / トレッドミル |
研究概要 |
変形性関節症は多因子病でありその発症ならびに変性の進行には様々な要因が考えられている。閉経期におけるエストロゲン欠乏はOA進行に重要な要素であると考えられているがその影響はいまだ明らかにされていない。本研究では、マウスにおいて閉経期のモデルである子宮摘出と関節内に侵襲を加えることのない強制走行を組み合わせる方法でそれぞれ単独よりも有意に変形性関節症を誘導できることを明らかにした。8週齢のメスBalb/cマウスに対して卵巣摘出を施行した。また卵巣摘出1週後より、6週間強制走行させた。走行終了後、子宮重量の測定とともに、膝関節を組織学的に解析した。卵巣摘出の有無、強制走行の有無で、4群(卵巣摘出のみ、卵巣摘出+走行、偽手術のみ、偽手術+走行、各群n=6)に分けて、比較検討した。その結果、卵巣摘出群では全例子宮標本の重量がコントロール群と比較し有意に軽く、子宮の萎縮が認められ、卵巣摘出が適切に行なわれたことを確認した。関節軟骨の組織像では、正常コントロールと比較し、卵巣摘出群及び強制走行群では有意な差を認めなかった。しかし卵巣摘出して強制走行させた群では、正常コントロールと比較し有意に軟骨基質の染色性が低下した。またこれらは、半月板の変性を伴っていた。私たちはこれまでラットに強制歩行させると、関節軟骨が早期に変性し、軟骨変性に対する薬剤の関節内投与の効果を検討するのによいモデルであることを報告した。しかしマウスは強制歩行のみでは明らかな軟骨変性が再現よく得られず、重量を含めた種の違いが影響したと推察される。今回卵巣摘出と強制走行を組み合わせることにより、関節内に侵襲を加えることなく軟骨変性を起こさせることが可能であった。このことは変形性関節症の発症にmechanical stressだけでなくhumoral effectが強く関わっていることを示唆すると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
私たちはこれまでラットに強制歩行させると、関節軟骨が早期に変性し、軟骨変性に対する薬剤の関節内投与の効果を検討するのによいモデルであることを報告した。しかしマウスは強制歩行のみでは明らかな軟骨変性が再現よく得られず、重量を含めた種の違いが影響したと推察される。今回卵巣摘出と強制走行を組み合わせることにより、関節内に侵襲を加えることなく、再現よく軟骨変性を起こさせることが可能であることを示した。変形性関節症は多因子疾患と考えられているが、本研究結果は、変形性関節症の発症にmechanical stressだけでなくhumoral effectが強く関わっていることを実験的に示した点で意義深いと考えている。ヒトでは閉経後の女性において変形性関節症の罹患率が上昇することが知られているが、本実験モデルの結果が非常に良くこの現象と相関することから、本実験モデルが、ヒトの変形性関節症の発症および病態の進行のメカニズムを解析する上で良いモデルとなり得る可能性を強く示唆していると考えている。これらの点から、自己点検による評価を、「おおむね順調である」とした。「当初の計画以上」としなかった理由は、本研究成果が、未だ学会発表のみで、論文投稿準備中であることによる。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は、軟骨変性の再現性の更なる検証及び組織像の経時的変化の観察を行い、運動負荷条件の最適化と実験モデルとしてのプロトコールの確立を目指す。 8週齢のBalb/cマウスまたはC57Bl/6マウスに卵巣摘除を施行し、その2週後から20m/分、100分で週5日、最長6週間の運動負荷をマウスに付した後、左膝は4%PFAにて固定し、パラフィン切片を作成する。膝関節軟骨表層のプロテオグリカン染色領域は、組織切片をSafranin Oにて染色した後、画像解析ソフトを用いて定量化する。さらに組織学的解析として、II型、X型コラーゲンおよびMMP13の発現を免疫染色により評価する。右膝関節はIndia Inkで染色し関節軟骨の損傷をマクロレベルで観察した後70%エタノールで固定し、マイクロCT(Comscan ScanXmate-E090)を用いて、軟骨下骨の構造の解析を行う。更に、これらの結果と、患者の了承のもと人工膝関節置換術の際に採取されたヒトのサンプルより得られた組織像およびX線像との類似性の比較検討を行う。 上記の研究によって確立された手法を用いて関節のホメオスタシスに関与することが示唆されている遺伝子の生理機能の解析による変形性関節症発症の分子メカニズムの解析を行う。これまでの研究より、BMP/TGFbファミリーに属する遺伝子ならびにそのシグナル伝達に関与する遺伝子が関節のホメオスタシスに必須の働きをしていることが明らかとされている(Lories RJU., Best Pract Res Cl Rh 22:209-20, 2008)。本研究項目では、関節軟骨のホメオスタシスにおけるBMP4とBMP7の生理機能を解析するため、四肢特異的コンディショナルノックアウトマウスを用いて、上記のモデルの作成を行い、関節軟骨の変性の進行における各遺伝子の生理機能の評価を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用計画に関して、物品費の主な支出先としては、マウス個体の購入、維持費用、ならびに組織学的実験に用いる試薬の購入費用に充てる。その他使用予定の研究費として、研究成果発表のための、論文投稿料、成果発表のための学会参加費、旅費として使用予定である。
|