研究課題/領域番号 |
23592206
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
神野 哲也 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 講師 (90343152)
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研究分担者 |
辻 邦和 東京医科歯科大学, 歯と骨のGCOE拠点, 特任講師 (20323694)
宗田 大 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (50190864)
関矢 一郎 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (10345291)
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キーワード | 変形性関節症 / 卵巣摘除 / メカニカルストレス / 遺伝的背景 |
研究概要 |
変形性関節症は多因子病でありその発症ならびに重症化には様々な要因が考えられている。閉経期におけるエストロゲン欠乏はOA進行に重要な要素であると考えられているが、その影響はいまだ明らかにされていない。本研究では、マウスの閉経後のモデルである卵巣摘除と関節内に外科的な侵襲を加えることのない、トレッドミルを用いた強制走行を組み合わせる方法でそれぞれ単独の処置よりも有意に関節軟骨の退行変性を誘導できることを明らかにした。8週齢のメスBalb/cマウスに対して卵巣摘除を施行した。また卵巣摘除1週後より、6週間強制走行させた。走行終了後、膝関節を組織学的に解析した。卵巣摘除の有無、強制走行の有無で、4群(卵巣摘除のみ、卵巣摘除+強制走行、偽手術のみ、偽手術+強制走行、各群n=6)に分けて、比較検討した。卵巣摘除の効果は、子宮重量の減少により確認を行った。関節軟骨の組織像の比較を行ったところ、偽手術のみの群と比較し、卵巣摘除群及び強制走行群では有意な差を認めなかった。しかし卵巣摘除と強制走行をコンビネーションで行った群では、偽手術群と比較して有意に軟骨基質の染色性が低下した。またこれらは、半月板の変性を伴っていた。ところが興味深いことに、遺伝的背景が関節軟骨代謝に及ぼす影響を比較検討するため、同様の実験をC57Bl/6マウスで行ったところ、卵巣摘除と強制走行をコンビネーションで行った群においても、著明な軟骨の変性は観察されなかった。本研究の結果は、関節軟骨のホメオスタシスに、全身性の液性因子、力学的負荷だけでなく遺伝的背景の差異が重要であることを示唆している。本実験モデルを用いて、軟骨代謝異常の分子メカニズムの解析を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
私たちはこれまでラットに強制歩行させると、関節軟骨が早期に変性し、軟骨変性に対する薬剤の関節内投与の効果を検討するのによいモデルであることを報告した。しかしマウスは強制歩行のみでは明らかな軟骨変性が再現よく得られず、重量を含めた種の違いが影響したと推察される。今回卵巣摘出と強制走行を組み合わせることにより、関節内に侵襲を加えることなく、再現よく軟骨変性を起こさせることが可能であることを示した。変形性関節症は多因子疾患と考えられているが、本研究結果は、変形性関節症の発症にmechanical stressだけでなくhumoral effectが強く関わっていることを実験的に示した点で意義深いと考えている。ヒトでは閉経後の女性において変形性関節症の罹患率が上昇することが知られているが、本実験モデルの結果が非常に良くこの現象と相関することから、本実験モデルが、ヒトの変形性関節症の発症および病態の進行のメカニズムを解析する上で良いモデルとなり得ると考えている。また本年度は、別系統のマウスを用いて同様の実験を行い、関節軟骨の代謝異常に遺伝的要因が関与していることを新たに見いだした。これらの点から、自己点検による評価を、「おおむね順調である」とした。「当初の計画以上」としなかった理由 は、本研究成果が、未だ学会発表のみで、論文投稿準備中であることによる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、これまでの実験結果を踏まえて、液性因子、力学的負荷、遺伝的要因が軟骨代謝異常に及ぼす影響について、その分子メカニズムの考察を行っていく。 更に、論文の投稿を行い、得られた研究成果を周知していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用計画に関して、物品費の主な支出先としては、マウス個体の購入、維持費用、ならびに組織学的実験に用いる試薬の購入費用に充てる。その他の研究費として、研究成果発表のための、論文投稿料、成果発表のための学会参加費、旅費として使用予定である。
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