研究課題
変形性関節症は、その分子基盤が十分解明されていない為、疾患の原因に基づいた治療法は未だ確立されていない。変形性関節症に関する基礎研究を困難としている要因の一つとして、変形性関節症の病態を効率よく再現出来る動物モデルが確立されていない点が挙げられる。本研究では、軟骨の退行変性が明らかになる以前に生じる関節(周囲)組織の初期変性の同定および解析を可能とする為の、再現性の高い非侵襲マウス変形性関節症モデルの確立を試み、発症ならびに進行の機序を解明することを目的としている。閉経及び前十字靭帯断裂等に起因する膝関節の不安定化はOAの重要なリスクファクターであると報告されていることから、本研究ではマウスの閉経モデルである卵巣摘除と関節内に外科的な侵襲を加えることのない、トレッドミルを用いた強制走行を組み合わせる方法で関節軟骨の代謝変化の観察を行った。8週齢のメスBalb/cマウスに対して卵巣摘除を施行し、術後1週より、6週間強制走行させた。卵巣摘除の有無、強制走行の有無で、4群(卵巣摘除、卵巣摘除+走行、偽手術、偽手術+走行)に分けて比較検討した。その結果、卵巣摘除+走行の群では、偽手術群と比較して有意に軟骨基質の変性が観察された。またこれらは、滑膜の慢性炎症と半月板の変性を伴っていた。系統間の違いによる遺伝的背景の相違が関節軟骨代謝に及ぼす影響を検討するため、同一実験をC57Bl/6マウスで行ったところ、4群すべてにおいて、著明な軟骨の変性は観察されなかった。本研究では、膝に直接の外科的侵襲を加えること無く軟骨の変性を再現よく誘導出来る系の構築を行った。また、その軟骨変性の過程は、ヒトのOAの初期変化に見られる現象と類似していた。更に、本実験系は、人種等の遺伝的背景の相違が関節軟骨のホメオスタシスに及ぼす影響を解析していく上で強力な実験系となることが期待された。
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Osteoarthritis Cartilage
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