研究課題/領域番号 |
23592207
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
山際 浩史 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (40377164)
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キーワード | 変形性膝関節症 / CTX-II / X線的検討 |
研究概要 |
我々は、過去から観察している大規模なコホート(検診対象者約1000名)において、2007年と2010年の3年間隔で大規模な縦断的膝検診を行い、関節軟骨のバイオマーカー(尿中CTX-II)と骨代謝マーカーの変動と、X線上のOAの発症・進行との関連の検討を実行してきた。 平成23年度に、2010年の検体のバイオマーカー値の測定を行なって、その結果を年度後半から解析し、2010年の横断研究においても、2007年に行った約1000人を対象とした我々の過去の横断研究と同様に、主に閉経後の女性において、CTX-IIの値が膝OA gradeとよく相関することを見出した。本内容は平成24年度に英文として投稿した。 平成24年度には、同年4月に開催された国際学会(OARSI)において、上記の2010年の横断的研究結果をポスターによる学会発表を行い討論した。その後、メインテーマである2007年と2010年の3年間の検診を両方とも受診した被験者を対象とする縦断的的検討を行った。その結果、①女性では中等度OA(grade2)からさらなるX線上の進行を認めた群において、尿中CTX-IIが高値となっていたこと、また、②3年間の経過で尿中CTX-II値の例が有意に増加した群は、男女ともに初回X線にはOAを認めないgrade1の群に多く、今後のOA発症につながる可能性を示唆している、ことを見出した。本内容を平成25年度には国内学会で、その後英文作成と国際学会での発表を行うべく、さらなる検討を追加して準備をしている。 また、我々は、上記の大規模調査と平行して、OA患者群の3年以上の縦断調査も行い、尿中CTX-II値が高値で経過した症例は、X線上のOA進行が見られたことを平成24年度に国内学会(JOSKAS)にて発表し、投稿を行い、受理され平成25年に掲載予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度 大規模住民検診においては、検診にて検体採取を行い、一旦、超低温冷蔵庫に保管し、検査を実績のあるSRL社に委託し、骨代謝関連マーカー NTX-Iならびに軟骨代謝マーカー CTX-II(Urine Clinical CartiLaps EIAキット:IDS社)の測定を行った。2010年検診の膝X線グレードと骨・軟骨代謝マーカーとの関連を調べ、横断的観点での関節マーカーとしての有用性を検討開始した。予定通り進行している。並行して行なっている患者群の3年以上の経過観察:患者群についても、数年前から長期経過観察を進めており、採取検体を同様に測定してきた。予定通り進行している。 平成24年度 大規模住民検診においては、データ解析を行なった2010年の横断結果について、海外の学会(OARSI)での発表を行った。論文作成へと進めている。また、縦断的検討を行なって、その結果をまとめ、平成25年5月に国内学会での発表を行なうべく準備中。論文作成も開始。予定通り進行している。並行して行なっている患者群の3年以上の経過観察は、OA患者群の縦断調査も行い、現時点で11例の結果を得ている。その中で、尿中CTX-II値が高値で経過した症例は、X線上のOA進行が見られたことを平成24年に国内学会(JOSKAS)にて発表し、論文投稿を行い、受理され2013年に掲載予定である。予定通り進行している。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、これまでの縦断的検討の結果を整理して、成果の公表を確実に行なって今後につなげることが重要と考える。 縦断的検討については、2010年時点で3年の経過であるが、その後今年ですでに3年を経過しており、今後の検診を平成25年以降に行うことができれば、少なくとも6年の長期経過を確認することができる。骨・関節のバイオマーカーを用いた日本国内での大規模縦断研究としては例を見ないものとなり得るため、来年以降を見据えて準備する。具体的には、来年度の新規科研費申請・取得を目指すべく、これまでの研究結果の解析からみた今後の研究継続の可否を、検診母体である行政(十日町市)、研究主体である新潟大学(研究費・人的配分)で検討していく。 患者群を対象とした検討については、引き続き病院受診をしている対象であるため、長期の経過を経年的に観察しやすい状況となっている。将来的なOAの進行との関連を本研究にてサポートを受け、これまで測定したデータを元に、経過観察を行う予定である。 また、脊椎の変性と関節・骨の代謝マーカーとの関連も注目されてきており、膝関節だけでなく、他の関節の関連も今後は注目していく必要があると考えているが、住民検診では更なるX線の評価が難しい面もあるため、X線評価以外の方法を検討するか、長期経過を追うことのできる対象者を絞って、医療機関での検診として継続するか検討していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、大規模検診における縦断的研究の結果を解析し、その一部を平成25年に開催される日本整形外科学会にて発表予定。2010年の横断結果を含む3年間の縦断的検討の結果を英文論文(英文校正費を予定)として作成しながら、平成26年には国際学会での発表を行うべく準備を進める。また、研究の成果を当施設のホームページなどで公表し、還元を行う予定である。 また、患者群の3年間の縦断的検討例のなかで、平成24年に採取し保存した未測定の数十検体について、本研究のサポートにて測定を行うべく、検査キット・検査機関の準備を進める予定である(可能であれば、検査費の一部に充当する)。それにより、データを蓄積して将来のOA進行の経過観察に利用していく予定である。
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