研究課題
自発的な咀嚼運動(チューイング)による慢性ストレス性骨粗鬆症の改善効果を解析した。ストレス条件下でチューイングさせたマウスとチューイングさせなかったマウスにおける骨の三次元画像解析、骨代謝マーカーの測定、ストレス関連因子の分析を実施し、以下の結果を得た。1. 無処置の対照群に比較して、ストレス群では、(1) 大腿骨と腰椎の骨量、骨梁幅、骨梁数が有意に低下し、骨梁間隙が有意に増加した。(2) 骨芽細胞数、骨芽細胞面、骨形成速度および血中オステオカルシン濃度が有意に低下した。(3) TRAP陽性破骨細胞数、破骨細胞面、血中I型コラーゲン架橋N-テロペプチド濃度が有意に上昇した。(4) 副腎重量が有意に上昇し、血中コルチコステロンとノルエピネフリン濃度が有意に上昇した。2. ストレス群に比較して、チューイング群では、(1) 大腿骨と腰椎の骨量、骨梁幅、骨梁数が有意な高値を示し、骨梁間隙が有意な定値を示した。(2) 骨芽細胞数、骨芽細胞面、骨形成速度および血中オステオカルシン濃度が有意に増加した。(3) TRAP陽性破骨細胞数、破骨細胞面、血中I型コラーゲン架橋N-テロペプチド濃度が有意に低下した。(4) 副腎重量が有意に減少し、血中コルチコステロンとノルエピネフリン濃度が有意に低下した。これらの結果より、慢性ストレスにおいて、視床下部‐下垂体‐副腎系および交感神経系が過剰に活動し、骨リモデリングに悪影響を与え骨形成の抑制と骨吸収の促進により骨量が低下し骨粗鬆症に陥る。チューイングが神経系におけるストレス反応を緩和し、骨形成の抑制と骨吸収の促進を改善し、ストレス性骨粗鬆症の進行を抑制しているものと考えられる。
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