研究課題/領域番号 |
23592214
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
北川 教弘 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (30294284)
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キーワード | 骨・軟骨代謝学 / 破骨細胞 / 骨吸収 / NFATc1 / ITAM |
研究概要 |
Siglec-15 は成熟破骨細胞の形成に必須であり、その機能にはシアル酸化糖鎖の認識に関わるV-setドメインおよびDAP12との会合に必須なK272が必要である。これに加えて本研究では細胞質内領域がSiglec-15の機能に必要であること、また微小管結合タンパク質SBP50(仮称)が本領域に会合することを見出していた。以上を踏まえて本年度は、Siglec-15の細胞外領域、内在性DAP12との会合し得ないK272A変異を持つ膜貫通領域、および微小管関連タンパク質SBP1会合領域と、DAP12細胞質内領域 を融合させたキメラタンパク質発現ベクターを構築した。本ベクターをこれまでの研究にて作成したSiglec-15遺伝子欠損マウス由来破骨前駆細胞に遺伝子導入した。Siglec-15遺伝子を欠損した破骨細胞が成熟破骨細胞を形成し得ないのに対し、本キメラタンパク質を強制発現した際には骨吸収活性を有する多核破骨細胞が形成された。本キメラ変異タンパク質はDAP12と結合し得ないことから、内在性DAP12を介さずにSiglec-15の機能を代償し得ると結論づけた。さらに本キメラタンパク質がシアル酸認識能およびITAM依存的にSiglec-15の機能を代償することを示すために、糖鎖認識に必須なV-setドメインの欠失変異体およびITAMのチロシン残基点変異体を作成した。これらとともにSiglec-15遺伝子欠損マウスの戻し交配を行い、C57BL/6の遺伝子背景へ純化させることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はSiglec-15遺伝子欠損マウスの骨代謝ならびに骨組織の解析を通じて本遺伝子の骨代謝における機能を明らかにすることを計画していた。しかし本年度の研究からin vitro分化誘導系を用いた解析により上記キメラタンパク質がSiglec-15の機能を内在性DAP12との結合を介さずに代償し得ることが示されてきた。以上を踏まえて、本キメラタンパク質を破骨細胞特異的に発現するトランスジェニックマウスを作成し、Siglec-15遺伝子欠損マウスやDAP12遺伝子欠損マウスと交配しその産仔の骨組織ならびに代謝を検討することで、Siglec-15の骨代謝における役割を明らかにするだけでなくDAP12会合受容体としての機能を検討しうることが想定された。そこでより重要度の高い本トランスジェニックマウスの作成を優先した。
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今後の研究の推進方策 |
1. これまでの研究からSiglec-15遺伝子欠損マウスをC57BL/6の遺伝子背景へ純化させることに成功している。そこで今後は本マウスとC57BL/6を顕微授精し、得られた受精卵を凍結保存することで本マウス系統の保存を行う。 2. Siglec-15とDAP12のキメラタンパク質は内在性DAP12との会合を介さずにSiglec-15の機能を代償しうることがin vitro分化誘導系を用いた解析から示された。そこで本キメラタンパク質を破骨細胞破骨細胞特異的プロモーター(catepsinK遺伝子や TRAP遺伝子)制御下で発現するトランスジェニックマウスの樹立を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由としては、1)本年度はSiglec-15遺伝子欠損マウスの胚凍結ならびに骨形態計測を行わなかったため、および2)Siglec-15-DAP12キメラタンパク質を破骨細胞特異的に発現するトランスジェニックマウスの作成を行わなかったため、の2点をあげられる。当初の計画を修正した理由として、キメラタンパク質を当初の計画から改善することにより、Siglec-15の骨代謝における役割を明らかにするだけでなくDAP12会合受容体としての機能をより効率よく検討しうることが想定されたためである。 次年度使用額は、1)これまでの研究からをC57BL/6遺伝子背景へ純化させたSiglec-15遺伝子欠損マウスの受精卵凍結、2)Siglec-15-DAP12キメラタンパク質を破骨細胞破骨細胞特異的プロモーター(catepsinK遺伝子や TRAP遺伝子)制御下で発現するトランスジェニックマウスの樹立ならびに系統保存、3)両マウスを交配させて得られた産仔の骨形態計測ならびに骨代謝マーカーの解析、の3点について使用する予定である。
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