研究課題
昨年度までの研究で、CCN2欠損マウス軟骨細胞においてはATPの細胞内濃度低下、ならびにATG合成酵素γサブユニットの遺伝子発現の低下がみられることがわかっていた。ゆえに今年度はCCN2欠損マウス軟骨細胞と野性型マウス軟骨細胞から代謝産物を抽出し、メタボローム解析によって網羅的に代謝産物の比較定量を行い、より多くの情報を得た。重要なことに、この解析でも細胞内ATP量はCCN2欠損軟骨細胞において50%にまで低下していることが示され、昨年度までの成果は裏付けられた。さらにCCN2欠損により引き起されたこのATP量減少は、細胞外からCCN2を供給することにより回復しうることも明らかとなった。しかしその一方で、ミトコンドリア膜電位の測定結果からは、ミトコンドリア内での酸化的リン酸化による好気的ATP産生活動にはCCN2欠損の有意な影響はみられなかった。またメタボローム解析の結果は、嫌気的ATP産生の主代謝経路である解糖系代謝産物が、CCN2欠損で軒並み低下することも示していた。そこで解糖系に関与する酵素群の遺伝子発現状況をCCN2欠損、ならびに野性型軟骨細胞で比較した結果、エノラーゼを始めとして解糖系後半で活躍する複数の酵素遺伝子発現が、CCN2欠損で低下することを見出した。つまり、ここで見られたATP量の低下は、ミトコンドリアにおける好気的ATP産生より、むしろ解糖系による嫌気的ATP産生がCCN2欠損により低下したためと考えられる。軟骨組織には血管がないため、そこにいる軟骨細胞は低酸素状況に適応した代謝システムを有している。今年度得られた成果は軟骨細胞のこういった特性をよく反映している。以上の成果は、CCN2による骨・軟骨再生治療に理論的根拠を与えるもので、事実今年度はCCN2誘導体を用いたより効率的なOA軟骨再生実験にも成功している。
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J Cell Biochem
巻: 115 ページ: 854-865
10.1002/jcb.24728.