研究課題
TGF-βシグナルは軟骨細胞肥大分化を抑制し、変形性関節症(OA)発症を抑制するが、メカニズムは不明であるので、肥大軟骨分化におけるTGF-β シグナル標的遺伝子について検討した。ATDC5軟骨細胞、マウス初代軟骨細胞と胎仔中足骨をBMP-2 + ITSで分化誘導を行い、TGF-βI型受容体抑制剤SB431542(SB)で内因性TGF-βシグナルを遮断して機能解析した。ATDC5細胞において軟骨成熟マーカーであるCol10a1とMmp13の発現は、SB添加群で有意に上昇した。BMP型Smad1/5/8のリン酸化レベルはSB添加により不変であったが、下流のBMP標的遺伝子Id1の発現は増強された。軟骨細胞成熟に伴いTgfb1発現が上昇し、さらにSmad2のリン酸化も活性化されていることから、内因性TGF-βシグナルにより誘導されるBMP シグナル阻害因子を検索し、SnoNを同定した。SnoNは用量依存的にBMPシグナル・レポーター活性を抑制した。SnoN ノックダウンによってId1とCol10a1の発現は増強、すなわちBMPシグナルと軟骨細胞肥大化は促進し、SBと同じ表現型となった。逆にSnoNの過剰発現は、BMPシグナルと軟骨細胞肥大化、そして器官培養骨の肥大軟骨層石灰化を抑制し、TGF-β添加と同じ結果となった。免疫染色の結果、in vivoにおいてSnoN蛋白はマウス胎仔軟骨の前肥大軟骨層に発現し、肥大軟骨層には認めなかった。正常軟骨では表層軟骨のみ弱いシグナルを認めたが、OA軟骨ではX型コラーゲン陽性の異所性肥大軟骨の周囲の軟骨細胞に強く発現が認められ、SnoNが関節軟骨においてOAの進展を抑制している可能性が示唆された。この結果を基に、さらに軟骨細胞分化後期の制御因子の検索を進め、Smpd3がAktシグナル経路の抑制を介して抑制する事と、Alg2が軟骨細胞分化に必須な小胞体ストレス応答分子Creb3l2の誘導を介して促進する事を示した。
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Journal of Biological Chemistry
巻: 289 ページ: 8135-8150
10.1074/jbc.M113.509331
巻: 289 ページ: 9865-9879
10.1074/jbc.M113.520585