研究課題/領域番号 |
23592224
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
齋藤 知行 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30170517)
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研究分担者 |
熊谷 研 横浜市立大学, 医学部, 助教 (10468176)
草山 喜洋 横浜市立大学, 附属病院, 指導診療医 (40618203)
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キーワード | 関節マーカー / 変形性膝関節症 |
研究概要 |
ヒアルロン酸の関節内注射は、関節軟骨の保護作用を有する治療法であり、OAの進行予防と病態の改善効果が期待されている。今年度はヒアルロン酸注射の効果について、関節マーカーの観点からそのメカニズムを検討した。膝OAにて膝痛を有する患者23例26膝を対象とした。平均年齢は67歳、立位膝X線正面像によるKL分類ではGade2が16膝、Gade3が8膝、Gade4が2膝であった。全例に週1回の関節穿刺とヒアルロン酸(HA)注射を5週連続で行い、初回と最終回(5回目)に穿刺した関節液の量、関節液中のHA、コンドロイチン4硫酸(C4S)、コンドロイチン6硫酸(C6S)、ケラタン硫酸(KS)、粘度を測定した。臨床評価にはAmerican Knee Society (AKS) scoreを用いた。関節液量は初回の平均13.2mlから最終回の平均7.3mlに有意に低下した(p<0.05)。HAは初回の平均1.5mg/mlから最終回の平均1.7mg/mlに増加した。C4Sは初回の平均16.2nmol/mlから最終回の平均14.6nmol/mlに減少した。C6Sは初回の平均53.0nmol/mlから最終回の平均43.8nmol/mlに有意に減少した(p<0.05)。KSは初回の平均4.2μg/mlから最終回の平均3.5μg/mlに減少した。粘度は48.5mPa・Sが69.7mPa・Sへ有意に増加した(p<0.05)。今回の結果より、HAの関節内注射が関節軟骨の保護作用を示し、関節破壊のマーカーとされるC4S、C6S、KSを減少させたと考えられた。また、HAの補充と関節液量の減少により、HA濃度と粘度が増加した。これらの関節マーカーと臨床所見に相関がみられ、HA注射の効果判定の指標となり得ることが示唆された。他のマーカーとの関連についても、引き続き調査を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
OAの進行予防と病態の改善を目的としたヒアルロン酸注射の効果について、各種関節マーカーを解析して評価することができた。臨床成績の改善が関節マーカーによる客観的評価法と相関し、期待通りの結果を得ることが出来た。これについては目標を達成できたといえる。一方、関節液の解析で未だ行っていないものもあり、当該年度に予定していた解析すべては終了したわけではない。また、OAの進行度と軟骨変性の組織学的評価との関連についてはまだ解析途中であり、統計学的な評価が出来ていない。したがって全体的な達成度としてはやや遅れていると自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に予定していたが実行できなかった関節液の解析については引き続き解析を行っていく。軟骨変性の組織学的評価については優先して解析を行い、まずは一定数に達したところで統計的な解析を行う。最終的には、OAの進行度と各種関節マーカーの値、軟骨変性の組織学的スコアとの間に統計学的な相関関係を検証するところまで行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度および平成24年度に予定していた解析が遅れてしまい、それに伴って消耗品を中心とした経費も予定していた額を使い切ることが出来ず、繰越金が生じた。遅れた分の解析は平成25年度に行われ、これにかかる経費は繰越金を使用する。全体的にはこれまでと同様、解析のための試薬、その他消耗品に使われるほか、学会発表のための旅費に使用される
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