ヒアルロン酸注射の効果について、関節マーカーの観点から検討した。今年度は対象症例を追加するとともに新たに炎症性サイトカインに対する影響についても検討した。 膝OAにて膝痛を有する患者39例43膝を対象とした。平均年齢は66歳、立位膝X線正面像によるOA進行度の横浜市大分類ではGade1が14膝、Gade2が27膝、Gade3が1膝、Gade4が1膝であった。全例に週1回の関節穿刺とHA注射を5週連続で行い、初回と最終回(5回目)に穿刺した関節液の量、粘度、関節液中のHA、コンドロイチン4硫酸(C4S)、コンドロイチン6硫酸(C6S)、ケラタン硫酸(KS)、Interleuikin-6(IL-6)を測定した。臨床評価には日本整形外科学会変形性膝関節症治療成績判定基準(JOA score)を用いた。 IL-6は初回の平均3733pg/mlから最終回の平均457pg/mlに有意に減少した(p<0.05)。C4Sは平均17.5nmol/mlから平均16.0nmol/mlに有意に減少した(p<0.05)。C6Sは平均59.7nmol/mlから平均50.2nmol/mlに有意に減少した(p<0.05)。KSは初回と最終回で有意差はなかった。粘度は49.6mPa・Sが72.5mPa・Sへ有意に増加した(p<0.05)。関節液量は平均14.2mlから平均7.2mlに有意に低下した(p<0.05)。HAは平均1.4mg/mlから平均1.6mg/mlに増加した。JOA scoreは投与前平均68点から最終投与後89点へ有意に改善した。 OA患者では関節液中のIL-6が増加することが報告されている。本研究において、OA膝関節液中のIL-6濃度はHA注射により減少したことから、HAは炎症の抑制効果も有することが示唆されたとともに、IL-6はOAの病態や治療効果判定のマーカーと成り得る可能性がある。
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