研究課題/領域番号 |
23592225
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
永谷 祐子 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90291583)
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研究分担者 |
大塚 隆信 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10185316)
浅井 清文 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70212462)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 関節リウマチ / 滑膜細胞 / グリオスタチン / チミジンホスホリラーゼ / NF-κB / カルシニューリン阻害剤 / タクロリムス |
研究概要 |
我々は,関節リウマチ(RA)の発症に,グリオスタチン(GLS)(血小板由来血管内皮増殖因子と同一でthymidine phosphorylase活性をもつ)が密接に関与していることを初めて見いだした.thymidine phosphorylaseはin vivo, in vitroにおいて血管新生作用を有している.我々の研究グループでは,これまでの基礎研究成果に基づき,(1)RAにおける関節破壊へのGLSの関与を解明すること.(2)GLS遺伝子の発現から関節炎惹起活性の発現に至る諸相を阻害することにより,RA病勢を緩和する方法を確立することを最終目標としている.本研究ではRA滑膜炎増悪の一翼を担っているGLS発現制御分子機構の解明を目標とした. 本年度は,RA人工膝関節置換術のさいに患者の承諾を得て採取した滑膜を培養し,3代から9代継代し形態学的に均一な線維芽細胞様滑膜培養細胞(FLSs)を確立した。RA由来のFLSsでのGLS産生は、TNF-αなど炎症性サイトカインによって誘導されたことよりNF-κBシグナル伝達経路の関与が示唆される。そこでNF-κB阻害剤(dexamethasone、aspirin、dehydroxymethylepoxyquinomicinなど)を用いて、グリオスタチン産生が抑制されるかを検討した。さらにGLSにはautocrine作用があり、これによりRA病態の慢性化、炎症の持続性が生じると考えられる。この誘導はcalcineurin inhibitorであるFK506によって抑制されることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書にてH23年度では、(1)組換え型グリオスタチン (GLS) の精製 (2)滑膜培養細胞の継代培養 (3)滑膜細胞でのグリオスタチン産生におけるNF-κBシグナル伝達経路の検討の3点を目標とした。(1)では、GLS cDNAを組み込んだ発現ベクター(pET-His)を E. Coliにトランスフェクトし、GLS組換体を調製した。精製した組換体はAffi-Prep Polymyxin Bにてlipopolysaccharideを除去した。本研究に必要な充分量のGLSを精製することができた。(2) では、人工膝関節置換術のさいに患者の承諾を得て採取した滑膜を培養し、3代から6代継代した。この滑膜培養細胞を安定的に維持し、in vitroの実験系に供することができた。(3) では、RA由来の滑膜培養細胞でのGLS産生がTNF-αによって誘導されることから(Wagrui Y, et al. Br J Rheumatol 1997; 36: 315-321)、NF- κBシグナル伝達経路の関与が示唆された。そこでNF-κB阻害剤(dexamethasone、aspirinなど)を用いた実験系を構築した。GLS産生は抑制されたが、さらに詳細に検討するためNF-κB阻害剤の選択を再考すべきと考えた。Cycloheximide前処理をした後TNF-α刺激することによりGLS mRNAの誘導が完全に押さえられたことから、TNF-αによるGLS蛋白の誘導には何らかのタンパク質を介していると考えられた。今年度そのタンパク質を同定することはできなかったが、GLSの発現調節機構の検索のためluciferase assayが必要と考えられ、vector 構築を手がけ始めた。
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今後の研究の推進方策 |
1. GLSのプロモーター解析今年度末から始めているGLSの発現機構を検討するためにGLSのプロモーターを組み込んだluciferase assay vectorを作製する。GLSのプロモーター領域にはSp1結合部位が7か所とISRESとGASが存在する。滑膜細胞でのGLS発現の転写調節活性部位を特定するために、数種類のdeletion vectorを作製する。予備実験では最上流のSp1 binding siteが重要であることがわかっている。さらにグリオスタチンの発現にSp1結合部位にSp1の結合が必須なものであること確認するためにクロマチン免疫沈降 (ChIP assay)を行う予定である。2. 抗Sp1抗体を用いた免疫組織化学染色、Western blot滑膜細胞では、TNFαによって GLSが誘導されるが、その機序は明らかにされていない。TNFαによって細胞室内あるいは核内のSp1の発現に変化が出るのかWestern blotにて明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究実施に際して必要な設備(細胞培養設備、Real time PCR cycler, 顕微鏡など)は、当研究室と当研究科共同研究施設に整っている。したがって設備備品費は該当なしである。消耗品費として培養細胞の培養試薬として、50万円、luciferase assay 試薬として30万円、ChIP assay 試薬として20万円、各種シグナル伝達阻害剤として約10万円などの消耗品費と、成果発表のための旅費10万円、また論文発表のための英文校正費13万円を算定している。
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