研究課題/領域番号 |
23592226
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
小池 達也 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50271177)
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研究分担者 |
海老原 健 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70362514)
多田 昌弘 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (20514235)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | レプチン / 関節炎 / トランスジェニック |
研究概要 |
関節炎における脂質系サイトカインと骨系タンパクのクロストークを解明する目的で、脂肪細胞から分泌されるアディポサイトカインの1つであるレプチンの関節炎における作用について検討した。レプチン遺伝子に変異のあるob/obマウス、血中レプチン濃度が正常の10倍以上となるレプチントランスジェニックマウスおよびその野生型マウスを用いて、RA モデルであるコラーゲン抗体関節炎(CAIA)を誘導した。CAIAはII型コラーゲンに対する5種類のモノクローナル抗体カクテル(5mg)をday0にマウスの腹腔内に投与し、さらにday3にLPS(12.5μg)を腹腔内投与した。関節炎の評価は肉眼所見(Terato法)で行った。その他軟X線での関節破壊評価、組織の染色(H-E染色・トルイジンブルー染色)およびその評価、末梢血中サイトカイン濃度の測定をおこなった。その結果としてob/obマウスは野生型マウスよりも関節炎が抑制されていた。さらにレプチントランスジェニックマウスにおいても野生型マウスよりも関節炎は抑制された。組織学的検討でも、ob/obマウスおよびレプチントランスジェニックマウスでは、野生型マウスよりも関節軟骨の変性が軽度であり、scoreでも有意差を認めた。サイトカイン濃度の測定では、ob/obマウスおよびレプチントランスジェニックマウスでは関節炎初期から極期にかけてIL-6濃度の上昇が抑制されていることがわかった。これらの結果からCAIAモデルマウスにおいて、ob/obマウスおよびレプチントランスジェニックマウスでは関節炎が抑制されることを確認した。レプチンの関節炎に対する作用は、通常の濃度の範囲では関節炎を増悪させたが、過剰な状態では関節炎が抑制されることが示唆された。そのメカニズムとしては血清IL-6濃度の変化を介していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
全身性脂肪萎縮症マウスに対する関節炎誘導による関節炎の評価を予定していたが、関節炎が誘導できなかったため評価できていない。全身性脂肪萎縮症マウスであるA-ZIP/F-1マウスはバックグラウンドがFVB/Nマウスであり、II型コラーゲンに対する5種類のモノクローナル抗体カクテルに対する感受性が低く、CAIAが誘導できないことがわかった。他の方法でも関節炎の誘導を試みたが、うまく誘導できていない。今後バックグラウンドを他のマウスに変換することを検討している。
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今後の研究の推進方策 |
レプチンがIL-6を介して関節炎を増悪および抑制する機序を解明することを現在検討中である。In vivoの実験でレプチンとIL-6の関連が確認されたため、in vitroでのその作用についても確認する。方法としてはTHP-1細胞をPMA (phorbol 12-myristate 13-acetate) 100nMで72時間処理した後にマクロファージに分化するため、そこにLPSを100ng/mlで投与してIL-6を発現させる。そこにLeptinを投与し、IL-6のmRNA発現量を評価する予定である。また、オステオカルシン(OC)が脂肪組織に作用して、抗炎症性アディポカインであるアディポネクチン産生を促進することが報告されており、肝臓でOCを発現するトランスジェニックを作成し、血中にOCが大量に存在するトランスジェニックを作り出す。さらに、すでに発表された方法でOCのノックアウトマウスも作成する。これらのマウスに、関節炎を誘導し、野生型マウスとの関節炎惹起の差異を比較し、OCの関節炎に与える影響を検討する。次に、これらの遺伝子改変マウス(ホモが無理であればヘテロ)に肥満を誘導し、血中の脂質系サイトカインおよびOC濃度の変動を調べ、可能であれば関節炎を誘導して、炎症・脂質系サイトカイン・OCの相互作用を明らかにする予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
これまでの計画通りであるが、脂肪萎縮症マウスが使用できないことが判明したので、その予算分をサイトカイン測定およびトランスジェニックマウスに振り分ける。
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