研究課題/領域番号 |
23592229
|
研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
上田 和樹 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (50405437)
|
研究分担者 |
上山 敬司 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (50264875)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 胃切除後骨障害 / 骨形態計測 / Microarray解析 / Network解析 / Proteosome解析 |
研究概要 |
胃切除後に高率に骨障害が起こることは、古くから知られている。過去の研究から、CaやビタミンDの吸収障害による骨軟化症osteomalaciaと考えられているが、ほとんど研究されていない。ラットの胃切除モデルGXを作製し、病態を多角的に解析した。体重は、対照群とGX群で有意差を認めなかった。Micro CTでは、GX群の大腿骨で顕著な骨密度と骨塩量の低下を認めた。組織学的検索では、骨吸収と骨形成が共に増加する高代謝回転型骨である。また類骨も増加している"High turnover bone with hyperosteoidis"であり、osteomalaciaやpostmenopausal osteoporosisと異なる。血清Caの低下、血清Pの増加、血清25-OH VDの減少、活性型血清1,25-(0H)2 VDの有意な増加を認めた。一方、血清PTHやCalcitoninレベルは対照群と差はなかった。大腿骨での骨代謝関係の遺伝子発現では、骨吸収マーカーのtartrate-resistant acid phophatase 5b mRNAレベル、骨形成マーカーのosteocalcin mRNAレベルとも有意に増加していた。VD代謝酵素の mRNAでは腎臓での1α-hydroxylase mRNAレベルが有意に増加していた。甲状腺でのPTHやCalcitonin mRNAレベルも差はなかった。遺伝子発現レベルも組織学的検索や血清生化学検査に相当した変化であった。このように、胃切除モデルでは、今まで知られていない、新しい機序の骨代謝異常が考えられた。そこで本研究では、遺伝子発現の網羅的解析とdata miningによる機能解析を行い、骨では1500個の遺伝子発現レベルが変化すること、その機能解析では、7個の遺伝子がハブを形成していること、炎症,免疫系の変化が想定された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的は、胃切除の有無の間で、肝臓および骨で発現する遺伝子群、血清中のタンパク群を網羅的に比較することにより、肝臓から分泌され、骨代謝を制御する因子を検索、同定することである。初年度は、骨の病的変化をmicro CTおよび骨形態計測で詳細に検討し、教科書の記載のような骨軟化症ではなく、"High turnover bone with hyperosteoidis"と命名した特異な組織像であることを明らかにした。血清生化学検査でもVDレベルはむしろ激増し、骨軟化症ではあり得ないこと、calcitoninやPTHなど従来の因子には差がないことを明らかにした。遺伝子発現でもこれらを裏付けた。従って、予想通り未知の因子(群)の変化があると考えられた。初年はまず、骨での遺伝子の網羅的解析とdata miningを行い、いくつかのハブとなる遺伝子群を見いだした。この成果を論文にまとめている段階である。肝臓と腎臓でも遺伝子の網羅的解析とdata miningを行っているが、骨と同様に、炎症、免疫系の変化が共通していることが判った。また血清蛋白の網羅的解析を2次元電気泳動法で先行して行っている。このように、予定より研究計画は進行している。
|
今後の研究の推進方策 |
胃切除の骨障害は、肝臓のみならず、消化管や他の臓器での慢性炎症の一貫である可能性がある。従って、他の臓器での遺伝子発現の網羅的解析とdata miningによる機能解析を追加すること、また組織学的な検索、特に炎症関係の因子の変化を全身の臓器で検討したい。血清蛋白の網羅的解析では、2次元電気泳動法で有意差があったspotを取り出し、LC-MS/MS法でタンパク質の同定を行う。タンパク質が同定できれば、臓器での遺伝子発現を検索し、産生臓器と産生細胞を明らかにし、骨病変との関係を明らかにする。
|
次年度の研究費の使用計画 |
まず、LC-MS/MS法でタンパク質の同定に用いる。実際には、専門機関に依頼するので、委託料に用いる。他、他の臓器での遺伝子発現の網羅的解析にも使いたいと考えている。
|