研究課題
胃切除後に高率に骨障害が起こることは、古くから知られている。過去の研究から、CaやビタミンDの吸収障害による骨軟化症osteomalaciaと考えられていた。ラットの胃切除モデルを作製し、病態を多角的に解析した。組織学的に骨軟化症ではなく、High turnover bone with hyperosteoidisと命名した、特異な病変であり、また遺伝子発現や血清ホルモンの解析から、古典的な経路は関与しないか、代償的な変化であることを明らかにした。胃切除モデルでは、教科書の記載とは異なり、今まで知られていない、新しい機序の骨代謝異常が考えられた。遺伝子発現の網羅的解析とdata miningによる機能解析を行い、骨では1500個の遺伝子発現レベルが変化すること、その機能解析では、9個の遺伝子がハブを形成していること、炎症-免疫系の変化が想定された。これまでの成果は一部を学会発表するとともに、海外の雑誌に投稿して、現在印刷中である。本年度は、血清蛋白の網羅的解析を行った。2次元電気泳動法で有意差があったspotを取り出し、LC-MS/MS法でタンパク質の同定を行ったところ、20種類のタンパク質を同定した。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究の目的は、胃切除の有無の間で、肝臓および骨で発現する遺伝子群、血清中のタンパク群を網羅的に比較することにより、肝臓から分泌され、骨代謝を制御する因子を検索、同定することであり、20種類のタンパク質を同定した。このように、予定より研究計画は進行している
胃切除の骨障害は、肝臓のみならず、消化管や他の臓器での慢性炎症の一貫である可能性がある。従って、他の臓器での遺伝子発現の網羅的解析とdata miningによる機能解析を追加すること、また組織学的な検索、特に炎症関係の因子の変化を全身の臓器で検討したい。また肝細胞を培養し、見いだした血清蛋白が肝細胞から分泌されるかどうかなどを検討する。
論文作成の諸費用(英文校正委託料、掲載料)に使う。また肝細胞培養のための消耗品を購入する。
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