研究課題
我々が破骨細胞分化制御において必須の役割を担っていることを示した転写抑制因子Blimp1について、本研究課題では、Blimp1が骨量制御を行ううえでの有用な分子標的であることを明らかにすることを目指している。当該年度ではBlimp1の誘導性欠損マウスの開発を行い、成獣でのBlimp1欠損が、どのような表現型を示すかについて解析を実施した。本マウスはBlimp1阻害剤を全身性に投与した場合と同様の影響を解析できることが期待され、骨量のみならず他組織に対する影響についても情報が得られるものと考えられた。特に常法にて開発されたBlimp1欠損マウスは胎生致死であることから、本マウスにおける誘導性Blimp1欠損は重篤な副作用を呈する可能性も考えられた。8週齢の誘導性欠損マウスおよび同胞対照マウスに対してpI-pC投与を行い、Blimp1欠損を惹起したのち、5週の観察回復期をおいて骨組織の解析を行った。投与期間および観察回復期間中に、Blimp1欠損マウスには突然死、異常行動および体重の著減著増等の一般所見上の変化は認められなかった。一方Blimp1欠損マウスの骨組織においては骨量の著増が認められ、同時に骨吸収指標である血中CTx量の著減を認めた。また骨形態計測の結果から、破骨細胞数、破骨細胞表面および骨吸収面が著減していることが示された。以上の結果から、成獣におけるBlimp1欠損は破骨細胞分化障害を介して骨量増加を惹起し得ることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
転写抑制因子Blimp1について誘導性欠損マウスの開発に成功し、成獣におけるBlimp1欠損が骨量増加を惹起し得ることを明らかにした。現在のところ副作用は確認されておらず、Blimp1が骨量制御を行ううえでの分子標的として有用であることが強く示唆されている。これらの結果はBlimp1の随伴分子でなくても、Blimp1を直接標的化することができれば、目標である骨量制御が達成できる可能性を示すものであり、本研究の目標達成に向けて大きく前進していると考えられる。
転写抑制因子Blimp1は破骨細胞のみならず、リンパ球、始源生殖細胞および腸上皮細胞等で機能していることが示されている。特に免疫系における重要性は繰り返し指摘されてきたところであり、成獣におけるBlimp1欠損が免疫細胞の恒常性にどのような影響を与えているかは、検討する必要がある。研究実績概要に記載した方法に準じ、Blimp1欠損マウスを作出して免疫細胞の異常の有無について検討を行う。また主要な組織について標本作製を行い、組織学的異常についても検討を行う。Blimp1阻害が骨に与える影響について、病態モデルを用いて検討を加える。性腺摘除モデルは雌雄両性において骨吸収亢進を惹起することができることが知られており、誘導性Blimp1欠損マウスを用いてモデル作成を行い、Blimp1欠損の影響を解析する。
本年度同様、遺伝子解析、蛋白質解析、およびマウス飼育解析に使用する予定である。
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