研究課題/領域番号 |
23592231
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
宮内 芳輝 慶應義塾大学, 医学部, 研究員 (90445411)
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キーワード | 破骨細胞 |
研究概要 |
研究代表者はこれまでに転写因子Blimp1が破骨細胞分化の進行に必須の機能を有することを明らかにしているが、Blimp1が破骨細胞において転写抑制作用を発揮する分子機構については未解明の課題として残されている。またBlimp1を破骨細胞分化抑制を図る際の分子標的として活用し得るかどうかについても検討すべき課題として残されている。そこで本年度では後者について特に検討を加えることとし、誘導性Blimp1欠損マウスの樹立とその解析に注力した。Mx1プロモーター下にCreを発現するMx1-Creマウスを用い、Blimp1欠損を誘導可能なin vivoモデルを樹立した。本モデルはpI-pC投与によりほぼ全身性にMx1プロモーターを活性化することが可能で、正常に発生した骨組織において突然Blimp1が欠損した場合の影響を解析することができるとともに、成獣においてBlimp1阻害剤が投与された状況を模することができると考えられる。8週齢において誘導されたBlimp1欠損は、発生過程から破骨細胞特異的にBlimp1を欠損したマウス同様、破骨細胞分化障害と骨吸収抑制を惹起し、結果として骨量増加をもたらすことが示された。また一般所見上異常は認められず、骨以外のBlimp1標的組織として骨髄および脾臓の解析を行ったところ、血球系細胞や抗体産生に異常は認められなかった。以上の結果から、Blimp1は破骨吸収を効率的に抑制し骨量増加を図る一方で、副作用の少ない有効な分子標的であることが強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基礎研究を臨床応用に供するという視点では、Blimp1の分子標的としての有用性を明確にした本年度の成果は非常に大きいと考えられる。またBlimp1の成体における機能解析を今後発展させるうえで、誘導性Blimp1欠損マウスという独自のツールを樹立・獲得したことは大きな価値がある。当初目的として掲げた破骨細胞におけるBlimp1の転写抑制機構の解明は、Blimp1経路の阻害方法に端緒を得るのがひとつの目的であり、Blimp1自体の阻害がin vivoで十分な効果を与えることが明らかになれば、おおむね目的は達成されていると考えることができる。
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今後の研究の推進方策 |
誘導性Blimp1欠損マウスの解析をさらに進め、Blimp1阻害剤が投与された場合の影響を検証する。また当該マウスを用いて骨粗鬆症モデルを作成し、病態進行に対するBlimp1阻害の有効性を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
病態モデルを含めマウスを主要な材料として使用する必要があるため、マウス飼養に関わる予算を計上した。またin vivoサンプル解析に必要な試薬類購入に必要な予算を計上した。
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