研究課題/領域番号 |
23592232
|
研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
染谷 明正 順天堂大学, 医学部, 准教授 (90167479)
|
研究分担者 |
長岡 功 順天堂大学, 医学部, 教授 (60164399)
|
キーワード | グルコサミン / 機能性食品 / 変形性関節症 / 滑膜細胞 / 糖鎖修飾 / 転写因子 |
研究概要 |
本研究は、グルコサミンが抗炎症作用を発揮するメカニズムを調べるため、グルコサミンでおこるタンパク質の糖鎖付加 [O-N-アセチルグルコサミン(O-GlcNAc)修飾)]に着目し研究を進めている。平成24年度は、滑膜細胞においてグルコサミンでO-GlcNAc修飾されるタンパク質の同定とその役割について検討し、以下の結果が得られた。 1. 滑膜細胞株MH7Aから、グルコサミンでO-GlcNAc修飾されるタンパク質が多数検出された。その中に炎症性サイトカイン遺伝子の転写を調節する転写因子Sp1が含まれていた。Sp1に着目しグルコサミンによる影響を調べると、グルコサミンは滑膜細胞におけるSp1発現量を約1.4倍増加し、Sp1のO-GlcNAc修飾を約1.7倍増加することがわかった。 2. グルコサミンは炎症性サイトカインIL-8の遺伝子発現やタンパク産生を抑制したが、O-GlcNAc修飾阻害剤はグルコサミンによるIL-8産生の抑制作用を消失させた。またSp1阻害剤は滑膜細胞からのIL-8産生を抑制した。 以上の結果から、グルコサミンはタンパク質のO-GlcNAc修飾を介して炎症惹起に関わるIL-8産生を抑制し、それにはSp1で制御される遺伝子の転写が関与している可能性が推測された。 これまで多くのO-GlcNAc修飾タンパク質が同定されているが、グルコサミンでO-GlcNAc修飾されるタンパク質はほとんど知られていない。本研究では複数のO-GlcNAc修飾タンパク質を同定することができた。現在、Sp1に着目して研究を進めているが、ほかのO-GlcNAc修飾タンパク質もグルコサミンの作用発現に関与する可能性が考えられる。従って、本研究で同定されたO-GlcNAc修飾タンパク質は、グルコサミンの作用機序解明のための手掛かりになると思われる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度では、グルコサミンでO-GlcNAc修飾されるタンパク質の機能について滑膜細胞を用いたin vitro系で調べる計画を立てた。しかしグルコサミンでO-GlcNAc修飾されるタンパク質が数多く検出された。そのためいくつかのタンパク質を選び、O-GlcNAc修飾されることを確認した後、研究対象とするタンパク質を決定した。そのための確認実験に時間を要したため、いくぶん研究進度が遅れた。現在、滑膜細胞を用いてO-GlcNAc修飾タンパク質の発現を変化させた時の細胞機能の変化や、炎症刺激におけるO-GlcNAc修飾タンパク質の動態変化を検討中である。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度に研究予定の滑膜細胞を用いたin vitroでのO-GlcNA修飾タンパク質の役割解析はまだ終了していない。しかし阻害剤等を使った実験結果から、グルコサミンの抗炎症作用にSp1のO-GlcNA修飾が関わっていることはほぼ確かめられている。そこで、現在行っている滑膜培養細胞を用いたin vitro実験を進めながら、平成25年度実施予定の変形性関節症モデル動物を用いたO-GlcNA修飾タンパク質の機能解析を進める予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
グルコサミンでO-GlcNAc修飾されるタンパク質の確認実験と、研究対象とするタンパク質を決定するのに時間を要した。そのため平成24年度実施計画に記載したin vitro実験が現在進行中である。平成24年度未使用分の研究費はこのin vitro実験に必要な細胞培養関連試薬、遺伝子導入試薬および抗体の購入費に割り当てる予定である。そして、平成25年度研究費は、実施計画に従いin vivo解析に割り当てる予定である。
|