研究概要 |
本研究はRA患者の関節手術時に得られる滑膜、関節軟骨、軟骨下骨を用いて、TLRシグナルの活性化による炎症誘発、骨軟骨破壊のメカニズムを解明し、RAに対してTLRを標的にした分子治療へと展開するための研究基盤を確立するのが目的である。本年度はRA手術症例からの滑膜組織の収集、細胞培養、保存など実験材料の確保に当初計画していたよりも時間と経費を要した。サンプル数が少ないため、確立されたデータはまだ得られていないが、以下にプレリミナリーなデータを示す。滑膜組織の免疫組織学的な検討では、TLR-2, TLR-4の発現を認めたが、TLR-3, -7, -8, -9の明らかな発現は認められなかった。また、ウェスタンブロットでも同様の結果であった。滑膜組織から抽出したRNAをもとに、TaqMan probeを用いたPCRによってTNF-α,IL-17の発現を検討したところ、TNF-αは疾患活動性の高低に関わらず全般的に発現が認められる一方、IL-17は症例による発現量の差が非常に大きい(10-20倍の開きが存在する)ことが分かった。初代培養後に液体窒素内で保存していた滑膜細胞を培養し、非血清存在下でTLR-2, TLR-4の合成リガンドであるペプチドグリカン(PGN)とリポポリサッカライド(LPS)で刺激し、細胞内シグナル伝達系の活性化をウェスタンブロットにて検討したところ、p38, ERKのリン酸化と NF-kBの活性化が認められた。興味深いことにこれらのシグナル伝達系の活性化は、RAの実臨床において使用されているインフリキシマブなどのTNF阻害剤によって減弱した。
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