研究概要 |
本研究は関節リウマチ(RA)患者の関節手術時に得られる滑膜、関節軟骨、軟骨下骨を用いて、TLRシグナルの活性化による炎症誘発、骨軟骨破壊のメカニズムを解明し、RAに対してTLRを標的にした分子治療へと展開するための研究基盤を確立するのが目的である。 平成23年度の報告書において滑膜組織におけるTLRの免疫組織学的検討を行い、TLR-2,-4の発現を認めたが、TLR-3, -7, -8, -9の明らかな発現は認められなかったことを報告した。これはウェスタンブロットでも同様の結果であった。 平成23年度は滑膜細胞をTLR-2, -4の合成リガンドであるペプチドグリカン(PGN)とリポポリサッカライド(LPS)で刺激し、細胞内シグナル伝達系の活性化をウェスタンブロットにて検討したが、平成24年度はTNF-α, IL-1, IL-1, IL-17, IFN-γなどの炎症性サイトカインで刺激し、培養上清中のMMP3濃度を測定することで、これら主要なサイトカインによる関節破壊制御のメカニズムを検討した。結果としては、滑膜細胞からのMMP3産生はIL-17 (100 ng/mL)単独による刺激では変化がなかったが、IFN-γ (1 ng/mL)との共刺激によって有意に増加した。一方、TNF-α (10 ng/mL)単独刺激ではMMP3産生は有意に増加したが、IFN-γとの共刺激によってその増加はキャンセルされた。IL-1 (10 ng/mL)単独刺激ではMMP3は最も増加したが、TNF-αと異なり、IFN-γとの共刺激によるMMP3増加のキャンセル効果は認められなかった。
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