研究課題/領域番号 |
23592234
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
園部 正人 東邦大学, 医学部, 助教 (60459774)
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研究分担者 |
中島 新 東邦大学, 医学部, 准教授 (60583995)
中川 晃一 東邦大学, 医学部, 教授 (30400823)
青木 保親 東邦大学, 医学部, 准教授 (70584001)
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キーワード | 関節リウマチ |
研究概要 |
本研究の目的は、RA滑膜におけるIL-17, IFN-γ, TNF-αの発現を解析し、これらサイトカインによる関節破壊制御のメカニズムをin vitroで検討することである。 実験にはRA患者20例20関節から手術時に採取した滑膜を用いた。RNA抽出後cDNAを作成し、IL-17, IFN-γ, TNF-αに対するTaqMan probeを用いてリアルタイムPCRを行った。次に、初代培養後の滑膜線維芽細胞(FLS)をこれらの炎症性サイトカインの単独または組み合わせで刺激し、24, 48時間後の培養上清中のMMP3濃度をELISA (Quantikine®, R&D Systems)にて測定した。 リアルタイムPCRではIL-17は約半数の症例にしか発現が認められなかったが、IFN-γ, TNF-αはほとんどの症例で発現が認められた。興味深いことに、IL-17が臨床的寛解例の20倍以上の異常高値を示した症例ではTNF-αの発現は認められなかった。FLSからのMMP3産生はIL-17 (100 ng/mL)単独による刺激では変化がなかったが、IFN-γ (1 ng/mL)との共刺激によって有意に増加した。一方、TNF-α (10 ng/mL)単独刺激ではMMP3産生は有意に増加したが、IFN-γとの共刺激によってその増加はキャンセルされた。 関節局所ではTNF-αが検出されないにも関わらずIL-17の異常増加を認める症例があり、今後、TNF阻害剤無効/効果減弱例に対する抗IL-17抗体治療の効果が期待される。また、in vitroでIL-17とIFN-γの共刺激によってFLSからのMMP3産生が有意に増加したことから、局所レベルではIL-17の軽度増加でもTh1活性化によるIFN-γ増加によって関節破壊が進行する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画はRA患者の手術時に切除される滑膜を実験材料に用いるものであるが、ほぼ予定していた数の実験材料を確保することができた。滑膜組織よりRNAを抽出し標的遺伝子のPCRや、培養細胞を用いた実験では目的タンパクのELISAを行い、一定の結果を得た。これらの結果を基にいくつかの国内学会で研究成果を発表することができた。このため、達成度は「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
研究内容に関しては、研究計画に沿って培養滑膜細胞を用いたin vitroの実験を中心に行う予定である。また、酸化ストレスと関節リウマチの病態について臨床、培養細胞の実験から興味深い知見を得ているので、研究を進めていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度中に行う予定であった滑膜培養細胞を用いた実験は、培養細胞の継代数が多くなってしまったために一部中断を余儀なくされた。このため未使用金が生じたが、平成25年度に行う予定であった細胞実験と合わせ当初の研究計画通り、細胞培養、遺伝子解析、生化学的解析に必要な試薬、器具を中心に研究費を使用する予定である。また、一部はデータ解析に必要なソフトウェア、研究成果発表のための学会準備・出張費、論文投稿費に使用する予定である。
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