研究課題/領域番号 |
23592235
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
中川 晃一 東邦大学, 医学部, 教授 (30400823)
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研究分担者 |
青木 保親 東邦大学, 医学部, 准教授 (70584001)
中島 新 東邦大学, 医学部, 准教授 (60583995)
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キーワード | 軟骨再生 / 滑膜 / ヒト |
研究概要 |
患者からの同意を得て、滑膜、軟骨、血液(50cc)を採取、抵凝固剤であるクエン酸入りの注射筒を使用して採血し、遠心により血漿成分を調整しました。血漿を用いて分離滑膜細胞の浮遊液を作製後、トロンビンにてフィブリンゲル化させ、このゲル100μlに対して2mm角の細切軟骨片3つをおいてインプラントを作製しました。これらを前年度に用いた軟骨分化誘導培地(1% FBS, 1% ITS mix, 160μg/ml sodium pyruvate, 100 ng/ml dexamethasone, 0.2 mM Asc2-P を添加した DMEM/F12培地)中で培養し、軟骨分化の評価を行いました。 組織学的検討をトルイジンブルー、サフラニン-O による染色で、生化学的検討をプロテオグリカン(PG)含有量測定(DMMB法)で行なったところ、共培養群で軟骨分化が促進する傾向がみられました。蛍光顕微鏡による観察では、PKH26で標識された滑膜細胞が軟骨様細胞へ分化していることが確認されました。本研究ではヒト細胞に至適な細胞密度を検討する目的で、1, 2, 4 million/mlの3種類の細胞密度について検討しましたが、1, 2 million/ml群と比較して、4 million/ml群で軟骨分化がより促進される傾向を認めました。また、専用遠心器(DePuy社製SYMPHONYTM)を用いて、血液からPlatelet-rich plasma(PRP)を精製し、PRPゲルを用いた場合の軟骨分化促進効果につき検討を行いましたが、明らかな有意差は認められませんでした。さらにゲルの強度を高める目的で、すでに軟骨移植への応用が報告されているChitosanとFibroinを担体として用いました。この実験では、Fibroinにおいて軟骨分化がよりみられることがわかりました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト分離滑膜細胞と細切軟骨片を含む移植用インプラント(フィブリンゲル使用)の作製と試験管内で培養する実験を行いました。動物実験でみられたほどの有意差は得られませんでしたが、ヒト滑膜細胞を用いた場合でもほぼ同等の傾向がみられることが明らかとなりました。ヒト細胞に至適な細胞密度を検討する目的で、1, 2, 4 million/mlの3種類の細胞密度について検討しましたが、1, 2 million/ml群と比較して、4 million/ml群で軟骨分化がより促進されることが明らかとなりました。しかしながら、ヒト軟骨組織からは動物実験のときほど多くの細胞数が得られず、軟骨細胞のサンプル量の確保は非常に難しいことがわかりました。 フィブリンゲルの代わりにPlatelet-rich plasma(PRP)を用いた場合の軟骨分化促進効果については、残念ながら明らかな効果は認められませんでしたが、ゲルの強度補強目的でChitosan, Fibroin を併用した実験では、Fibroinでより軟骨分化がみられる傾向を認めました。 以上より、「(2)おおむね順調に進展」の評価としました。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト分離滑膜細胞と細切軟骨片を含む移植用インプラント(フィブリンゲル使用)の作製と試験管内で培養する実験では、ほぼ予想された結果が得られました。滑膜細胞密度は、1, 2, 4 million/mlの3種類の細胞密度について検討し、4 million/ml群で軟骨分化がより促進される傾向を認めましたが、これだけの細胞数をヒトサンプルから確保することは困難であり、将来的な臨床応用を考慮するとやはり1 million/mlが妥当なのではないかと考えられました。今回は試験管内での検討であり、生体内においては(動物実験の場合と同様に)少ない細胞数でも軟骨分化がより促進される可能性があります。したがって最終年度である平成25年度には、予定通りヒト分離滑膜細胞と細切軟骨片を含むインプラントをヌードマウスの皮下に移植し、その効果を検討する予定です。また、ゲルの強度補強目的でChitosan, Fibroin を併用した実験において、Fibroinでより軟骨分化がみられる傾向を認めたことから、今後Fibroinの併用も検討しています。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、前述の通り、ヒト分離滑膜細胞と細切軟骨片を含インプラントをヌードマウスの皮下に移植する実験を行います。引き続き細胞培養用の消耗品(培養皿、培養液、血清、増殖因子、酵素など)、抗体試薬、分子生物学的解析用試薬、組織染色用試薬、実験動物等の購入が必要であり、これらに研究費を使用させていただきます。また、実験の伸展状況によっては、フィブロインの使用も必要となりますので、これらの購入にも充てさせていただきます。
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