研究課題/領域番号 |
23592236
|
研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
遊道 和雄 聖マリアンナ医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60272928)
|
研究分担者 |
唐澤 里江 聖マリアンナ医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50434410)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | DNA酸化損傷 / 細胞ストレス応答 / 軟骨変性 / 活性酸素 / DNA修復酵素 / メカニカルストレス / 変形性関節症 / 酸化ストレス |
研究概要 |
我々は、細胞ストレス因子に関する研究成果をもとに、変形性関節症の病因・病態について、以下の未解明な課題を検討している。1 メカニカルストレスに応答する軟骨細胞DNA損傷修復酵素活性の調節機構の解明と、対ストレス防御機構としての役割の解析2 ストレス応答DNA修復酵素調節機構の変化が軟骨変性の誘因となるか否かの解析 平成23年度は、軟骨細胞のメカニカルストレス応答機構としてのDNA損傷修復酵素活性の変化をストレス負荷培養実験系を用いて以下のごとく検討した。 1)DNA酸化損傷の検出: 各種細胞ストレス条件下の培養実験系において、軟骨細胞DNA酸化損傷の程度を軟骨細胞に発現するグアニン酸化体(8-oxoguanine)の免疫染色ならびに、蛍光酵素抗体法により解析し、ストレスにより誘導されるDNA酸化損傷を検出することができた。2)DNA損傷修復酵素の活性変化の検証: 上記細胞培養実験系を用いて、各種ストレス培養条件下における軟骨細胞DNA損傷修復酵素(OGG1)の発現変化をWestern blottingで検証し、特定のストレス条件下でのDNA損傷と、その後に誘導される修復酵素Ogg1活性の経時的変化について知見を得ることができた。3)細胞内の活性酸素種の検出: 実験的メカニカルストレス負荷による細胞内の活性酸素種(reactive oxygen species: ROS)の産生状況は生細胞内のROSを標識できる蛍光プローブにより蛍光顕微鏡を用いて評価するため、蛍光プローブの条件検討を行い、実際の培養細胞を用いて予備試験を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
変形性関節症におけるメカニカルストレスに対する細胞応答や防御機構は未解明な点が多く、有効な予防法・治療法開発のためには細胞ストレス応答の観点からの病因病態解析が必要と考えた。そこで我々は、メカニカルストレスに対する「防御機構としての軟骨細胞ストレス応答の調節機構」と「細胞ストレス応答調節機構の変化・破綻がもたらす軟骨変性における意義」を、本研究期間内に明らかにすることを目指してきた。 平成23年度は、ストレスに応答する軟骨細胞DNA損傷修復酵素(OGG1, MTH1)発現の経時的変化と、細胞のDNA損傷(グアニン酸化体)の状態や、それに応答するDNA修復酵素活性誘導について情報を得ることができた。 これにより、24年度、25年度の目標である発現・活性の細胞内情報伝達路の解析ならびに、ストレス応答DNA修復酵素の調節機構の変化・破綻が軟骨変性の誘因となるか否かの検証に向けた基礎的知見を得ることができたと考える。
|
今後の研究の推進方策 |
平成23年度は当初の研究計画に沿って概ね順調に遂行することができた。得られた知見は平成24年度、25年度研究計画の基盤となるため、実験の節目節目に追試験(再実験)を行い、知見の正確性や精度を検証する。 本研究については、研究責任者、研究分担者、研究協力者、研究技術院および大学院生が参加する週2回のデータカンファレンスにおいて常に研究の進捗状況ならびに、問題点を確認しあっており、今後とも実験の進捗を確認しあいながら、研究を進めていく。 平成23年度の成果は、一部をまとめて国際学会(国際変形性関節症学会:2012年4月25-28日スペイン開催予定)に応募し採択されたが、原著論文の投稿は未だであるため、平成24年度研究の進況にあわせて、原著論文を投稿する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、23年度計画中の以下の継続に加えて、DNA損傷修復酵素OGG1の発現・活性の細胞内情報伝達路の解析を行う。 平成23年度からの継続実験計画: 予備試験を行ってきたストレス負荷による細胞内の活性酸素種の産生状況を、生細胞内のROSを標識できる蛍光プローブにより蛍光顕微鏡およびフローサイトメトリーを用いてリアルタイムに近い状態で測定する。 平成24年度からの新規実験計画: ストレス刺激条件下における翻訳後修飾の網羅的プロテオミクス解析; 実験的メカニカルストレス下における軟骨細胞のDNA損傷修復酵素OGG1活性化の細胞内情報伝達路を、翻訳後修飾の網羅的解析法(プロテオミクス解析)により分析する。RNA干渉法を用いたOGG1欠損軟骨細胞および遺伝子導入によるOGG1過剰発現軟骨細胞を樹立し、各種ストレス条件下におけるこれらの細胞のリン酸化翻訳後修飾の網羅的解析を比較分析し、メカニカルストレスに応答した軟骨細胞DNA修復酵素OGG1の細胞内情報伝達路を解析し、得られた研究成果発表を行う。
|