研究課題/領域番号 |
23592239
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
深田 俊幸 独立行政法人理化学研究所, サイトカイン制御研究グループ, 上級研究員 (70373363)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 骨・軟骨代謝学 / 新規エーラス・ダンロス症候群 / 亜鉛トランスポーター |
研究概要 |
申請者は、亜鉛トランスポーターSLC39/ZIPファミリーに属するZIP13が硬・歯・結合組織の発生に重要であり、BMP/TGF-βのシグナル伝達に関与し、さらにヒトにおけるその機能不全が新規エーラスダンロス症候群の原因になることを発見した(Fukada, PLoS ONE 2008)。本申請研究は、ZIP13がどのような形をとり、どのようにしてBMP/TGF-βのシグナル伝達を調節しているのか、構造学的解析からZIP13が関わる生命現象の機序解明を目指すものである。この目標達成のためにヒトZIP13蛋白質の立体構造解析を試みており、その研究過程において、まずヒトZIP13蛋白質の生化学的な解析を試みた。その結果、我々はヒトZIP13リコンビナント蛋白質の大量産生系と精製方法を確立し、「ヒトZIP13蛋白質はホモ2量体を形成する」ことや「ZIP13蛋白質は亜鉛を輸送する細胞内亜鉛トランスポーターである」ことを初めとするヒトZIP13蛋白質の様々な生化学的特徴付けに成功した。膜蛋白質としては分子量が小さくかつ糖鎖が付加されていないZIP13は、結晶化を目的とする真核生物の膜蛋白質としての優位性を有している。哺乳類の亜鉛トランスポーターの構造はまだ解かれておらず、今回我々が得た結果は、ヒトの健康に関わる亜鉛トランスポーターの構造を結晶解析等によって原子レベルで解明するための大きなステップである。これらの結果は原著論文(Bin,J.Biol.Chem. 2011)と総説論文(Fukada, J.Biol.Inor.Chem.2011)、および下記のプレスリリースによって発表された。・平成23年理化学研究所プレスリリース「ヒトZIP13が二量体を形成して亜鉛トランスポーター機能を発揮」・平成24年RIKEN RESEARCH「Moving a mandatory mineral」
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請研究では、1)ZIP13に結合する分子の同定と機能解析、2)ZIP13の構造解析、3)ZIP13病原性変異体(G74D型ZIP13)のタンパク質の特徴の解明を研究目標に掲げている。ZIP13が骨・歯・結合組織関連の遺伝病の原因として同定されたことは、ZIP13の整形外科領域・歯科領域・皮膚科領域の研究対象としての重要性を示すものである。しかしながら、ZIP13に関する論文は申請者らが2008年に初めて発表したものであり(Fukada et al., PLoS ONE 2008)、未解決の問題が数多く残されている。申請者は、現時点で「ヒトZIP13リコンビナント蛋白質の産生系と精製系の構築」と「ヒトZIP13蛋白質はホモ二量体を形成する」ことを初めとするヒトZIP13蛋白質の生化学的特徴を発表した(Bin,J.Biol.Chem. 2011)。一般的に膜蛋白質の立体構造解析には技術上の多くの困難が存在するが、ヒトZIP13蛋白質の詳細な生化学的特徴が判明したことは、さらなる解析を進めるうえで大きなステップとなる。一方で、ZIP13に結合する分子の同定とG74D型ZIP13の特徴解析については大きな進捗が得られなかった。Yeast two hybrid systemに用いるベイト部分の精査やcDNA libraryの調製方法、免疫沈降に使用する抗体の再調整など、解析方法を再検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
ヒトZIP13蛋白質の結晶化について、蛋白質濃度/温度/塩濃度/界面活性剤の種類と濃度を調整した条件下において試行する。結晶が得られた場合は、X線構造解析によってヒトZIP13蛋白質の立体構造を解く。結晶構造条件が整った場合は、その方法と条件を病原性変異型ZIP13 (G74D型ZIP13)の構造解析に応用する。結晶化が計画通りに進まない場合は、上記の諸条件の再検討に加えてZIP13発現ベクターのコンストラクションのデザインを変更する。具体的には、ヒトZIP13蛋白質の欠失変異体や点変異体を作製して結晶化を行う。産生系の生物種や精製方法の変更も検討して、産生と精製に最適な条件を見つける。ZIP13に結合する分子の同定については、Yeast two hybrid systemのベイトの種類やcDNA libraryの調製方法を変更し、さらに免疫沈降に使用する抗体を再調製して、各段階の方法を検討し直して挑戦する
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次年度の研究費の使用計画 |
研究に必要な分子生物学試薬と器具、生化学実験試薬と器具、免疫化学実験試薬、細胞培養試薬と器具を申請する。また、研究成果を学会で報告する経費として旅費を、誌上発表するための経費として外国語論文校閲費を予算に計上する。
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