研究概要 |
ヒト軟骨での軟骨変性の初期変化とOAの進行過程を検証した。関節軟骨の内因性阻害因子(TIMP1,2,3,4)とタンパク質分解酵素(MMP1,2,3,ADAMTS5)に着目しており、real-time PCRによる解析では、TIMP2,3,4はMMP13, ADAMTS5に先立って初期OAで変化していた。また、MMP13とADAMTS5の発現は初期OAでは変化は無く、末期OAで増加していた。TIMPについては、TIMP-1は初期および末期OA軟骨で対照軟骨に比して発現が亢進する傾向があったが,TIMP-2,3,4の発現は初期、末期OA軟骨で対照軟骨に比べすべて半分以下に低下していた。領域別に見た場合、2種のタンパク分解酵素の発現は初期、末期OAいずれも軟骨の変性部と非変性部の間に明らかな差が見られなかったのに対し、TIMP-2,3,4の発現は初期、末期OAとも軟骨変性部で低下していた。さらにヒト軟骨抽出液に含まれる内因性阻害因子(TIMP1,2,3,4)とタンパク質分解酵素(MMP1,2,3,ADAMTS5)のタンパク発現をLuminexシステムおよびELISAで検証した結果、real-time PCRによる解析と概ね同様の変化を示していた。以上より、各因子のmRNAとタンパクの両方の発現が概ね一致していることから考慮すれば、内因性阻害因子とタンパク質分解酵素のバランスの崩れが軟骨変性の進行に影響していると考えられる。
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