研究課題/領域番号 |
23592242
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
櫛方 哲也 弘前大学, 医学部附属病院, 講師 (80250603)
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研究分担者 |
廣田 和美 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20238413)
吉田 仁 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00374843)
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キーワード | 麻酔 / 睡眠 |
研究概要 |
体重300-350g、750-900gのSD系雄性ラットを対象とし、ケタミン(100mg/kg)、プロポフォール(80mg/kg)、をそれぞれ腹腔内投与し麻酔を行 った。ラットを所定の方法に基づき断頭、摘出した脳から大脳皮質、視床下部、海馬、橋を分別、OXおよびMCH含量をELIZAで定量した。これら の部位は睡眠-覚醒、記憶に関与する部位であり、また、麻酔機序にも関与する部位である。各時点での血液中のOX含量も同様に測定 した。測定時点は麻酔前、麻酔後20分(麻酔中)、麻酔後60分、麻酔後120分の4点とし、含量変化の推移を検討した。また、ニューロ ペプタイドS (NPS)を脳室内投与し、各種麻酔薬の持続時間に及ぼす影響と麻酔後の睡眠動態を検討した。 また、体重300-350gのSD系雄性ラットを対象とし、NPS受容体拮抗物質を脳室内投与し睡眠に与える影響を定量した。その結果NPS受容体拮抗物質は睡眠促進した。NPS自体は生理的な覚醒物質であり、これを阻害することにより睡眠が促進されたと考えられた。この結果NPS系をコントロールすることで麻酔後の麻酔後睡眠障害を内因性の物質を通じて調整できる手がかりが得られたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では吸入麻酔薬を対象とする予定であったが、近年、Melanin-concentrating Hormone (MCH)の生理作用のうち睡眠に与える影響が注目されている。MCHはREM睡眠を促進する。また、解剖学的な存在部位がオレキシン作動性神経の近傍に位置する。従って、MCHの動態をオレキシンと共に定量することはこの課題、即ち、麻酔・手術後の睡眠、認知障害機序と治療法の研究の研究目的に合致するのみならず、さらに知見を拡げうると考え、これまで知見が得られた静脈麻酔薬でさらに探究できた。
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今後の研究の推進方策 |
その結果NPS受容体拮抗物質は睡眠促進した。NPS自体は生理的な覚醒物質であり、これを阻害することにより睡眠が促進されたと考えられた。この結果NPS系をコントロールすることで麻酔後の麻酔後睡眠障害を内因性の物質を通じて調整できる手がかりが得られたと考えられる。 平成24年度と同様に体重300-350gのSD系雄性ラットを対象とし、青班核由来中枢ノルアドレナリン作動性神経の特異的毒素であるDSP4を50mg/kgを腹腔内投与、上記の方法で脳波、筋電図用電極、脳温測定用サーミスタ、脳室内投与用カニューレを留置する。DSP4の作用発現までの10日間を環境温24゚C、明暗周期12時間の恒温ケージ内で1週間飼育し環境馴化を図る。その後平成24年度と同様のプロトコールで麻酔時間、睡眠を評価し、OX、NPSによる修飾に中枢ノルアドレナリン作動性神経が関与するか否か検討する。In vitroではOXとその生理作用において相補的なmelanin-concentrating hormone (MCH)をH24年度と同様の方法で定量する。用いる麻酔薬はケタミ(100mg/kg)、プロポフォール(80mg/kg)とする。これら麻酔薬の量は標準量であり、麻酔時間(正向反射消失から復元まで)は約30分と力価を統一してある。対照とするラットを若年、老年に拡張し、年齢によるOXとMCHの反応の差異を検討し麻酔・手術後の睡眠、認知障害機序ラットを所定の方法に基づき断頭、摘出した脳から大脳皮質、視床下部、海馬、橋を分別、OX、MCH含量をELIZAで定量する。これらの部位は睡眠-覚醒、記憶に関与する部位であり、また、麻酔機序にも関与する部位である。各時点での血液中のOX含量も同様に測定する。測定時点は麻酔前、麻酔後20分(麻酔中)、麻酔後60分、麻酔後120分の4点とし、含量変化の推移を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ニューロペプタイドS (NPS)、OX、MCHと麻酔の相互作用についてのアゴニスト、アンタゴニストを用いた麻酔時間測定、行動実験、脳波分析を行う。現有する装備試薬はフルに使用するが、試薬、動物など一定量はどうしても必要である。脳波電極は電気抵抗軽減目的で金メッキが施されているため単価が高価であるが、良好なデータ収集のためには必須であり、再利用は利かない。また、OXおよびMCH定量にはELIZAが必要であるが、麻酔下の定量は測定感度との兼ね合いを見極めるために慎重を要し、1試料につき重複定量を行いたい。OX、NPS、MCHと麻酔の相互作用についてノルアドレナリン神経破壊の役割を検討、また、引き続きNPS、OXによる麻酔後の睡眠時間変化に及ぼす影響を検討する。消耗品の算出根拠は上記と同様であり、また、成果の発表は研究費受領者の義務として必要であると考え、学会出張旅費を計上する。
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