研究課題/領域番号 |
23592244
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
藤原 直士 新潟大学, 医歯学系, 教授 (70181419)
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研究分担者 |
瀬尾 憲司 新潟大学, 医歯学系, 教授 (40242440)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 脳局所機能 / 海馬 / 大脳皮質 / 膜電位画像 / GABAA受容体 |
研究概要 |
神経マクロネットワークに形成される脳局所機能への麻酔作用とその機序解明を目的として、平成23年度は以下の研究を実施した。1.脳組織切片における神経シグナル画像の高精度化と薬物作用の検討に関しては、(1)脳切片の神経活動について、タンデムレンズ蛍光顕微鏡(ブレインビジョン社)を導入することにより、広範囲の視野で高品質な膜電位画像を観察することができた。(2)海馬のスライス方向による興奮伝搬を検索し、矢状切片においては、歯状回への刺激により、海馬CA3、CA2、CA1、さらにはSubiculumに達する複数のシナプスを介する興奮伝達を画像として記録することができた。複数のシナプスを経由する興奮伝達は、グルタミン酸受容体(AMPA/Kainate受容体)拮抗薬のCNQXにより強く抑制された。(3)海馬切片の灌流液温度を低下することで、刺激後瞬時に伝わる興奮、それに続く広範囲に強く伝わる興奮(CNQXで抑制)、さらにその後の長く続く興奮という、伝達速度の異なる3成分の興奮伝搬過程を観察することができた。2.大脳皮質、海馬における抑制系に関与するGABAA受容体サブユニット構成に関しては、(1)ホルムアルデヒド固定したマウス脳の大脳皮質、海馬薄切標本を用い、蛍光抗体法によりGABAA受容体サブユニットの分布を検索したところ、大脳皮質では吸入麻酔薬のターゲットサイトである可能性が指摘されるβ2、β3サブユニットがともに高密度で分布していた。(2)海馬、歯状回ではβ2サブユニットが高密度で分布していたのに対し、β3サブユニットの密度は低かった。以上、脳切片の局所脳機能の画像解析の精度向上を図ることができた。一方で脳局所のGABAA受容体サブユニットの構成や分布を捉えることで、機能と物質の両面から局所脳機能への麻酔作用を解明するユニークかつ有用な実験システムをつくることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.研究機器、機材:震災に関連して物品等の一部に遅れはあったものの、平成23年度内に予定された実験機器、機材は導入、設置されており、研究機器、機材に関しては年度計画を達成している。2.研究方法、手法、検討課題の検索:(1)脳切片を用いた局所機能の画像化については、精度良く測定することが可能となっており、さらに、新たな解析手法を試みるなど、年度計画はほぼ達成している。(2)組織学的および生化学的検索に関しては、GABAA受容体サブユニットに対する抗体等の選択について、さらに検討が必要であり、一部未達成の点がある。3.成果の発表に関しては、一部の消耗品等の調達の遅れに伴う実験の遅れから、年度内に収集すべきデータの蓄積が不十分で、本研究課題に関して平成23年度内に予定した学会発表や論文発表ができなかった。現在、データの取りまとめなど論文作成作業を進めているが、成果発表については未達成であるため、平成24年度には、23年度計画の成果を含めて学会発表、論文発表に重点的に取組む。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の計画のうち、震災の影響を受けて消耗品等の一部物品の調達に支障をきたすことがあったため研究推進に若干の遅れが生じた。そのため、国際脳研究機構科学会議への参加を見送ることとなり、旅費および成果公表に関する経費の執行が当初計画と異なり余剰が発生し、次年度使用となった。ただ、平成23年度中には研究を進めるための機器・機材や解析手法などの面での体制は整えることができた。現在、実験データを蓄積し、取りまとめて論文作成を行っており、成果発表の発表という当初計画から遅れている部分を重点に取組を促進する。したがって、平成24年度は研究計画および研究内容の変更等はなく、当初計画に沿って研究を進める。研究経費は平成24年度の当初計画を進めるための経費とともに、平成23年度の次年度使用額については、未達成である成果発表を進めるための経費を確保することとに充当する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究計画には当初計画からの変更はない。研究経費の使用計画は当初計画通り、海馬、大脳皮質各部位における局所神経活動への麻酔薬の作用とGABAA受容体サブタイプの構成における差異を精査し、GABAA受容体サブタイプの分布と麻酔作用との関連を明らかにする。また、測定された動画データを整理・編集し、動画ライブラリー構築の準備を進める。したがって、予定支出内訳は、消耗品(薬品、実験動物、実験器具、混合ガス、電子媒体)、成果発表のための旅費、実験補助者への謝金、論文投稿経費などである。基本的に当初計画と大きな変更はないが、研究成果の公表を確実に進めるための費用(論文作成のための英文校正費など)を確保する。
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