研究課題/領域番号 |
23592244
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
藤原 直士 新潟大学, 医歯学系, 教授 (70181419)
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研究分担者 |
瀬尾 憲司 新潟大学, 医歯学系, 教授 (40242440)
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キーワード | 膜電位画像 / 細胞内カルシウム画像 / 大脳皮質 / 海馬 / 神経伝達 |
研究概要 |
脳局所におけるシグナル伝達の画像解析を中心に、平成24年度は以下の研究を実施した。 1.脳組織切片における神経シグナル伝達の画像解析 脳局所神経シグナル伝達の画像解析については、タンデムレンズ蛍光顕微鏡を用いて脳切片の神経活動を広い領域で観察し、画像解析の高精度化を進めた。とくに、マウス海馬切片を用いて歯状回(苔状線維)への刺激によって海馬CA3、CA2、CA1、さらにSubiculumへと複数のシナプスを介する興奮伝達を画像化することができた。苔状線維への刺激ではCA3よりもCA2において強い脱分極応答が観察され、CA1内に興奮が伝わった後にSubiculumにまで伝達する興奮を画像で記録できた。また、同様な海馬切片モデルで細胞内カルシウム応答を観察すると、膜電位興奮と対応する部位で細胞内カルシウム上昇が観察された。AMPA/Kinate型グルタミン酸受容体拮抗薬CNQXの存在下では苔状線維刺激に対するCA2放射層での膜脱分極応答が消失するのに対して、同層の細胞内カルシウム上昇は弱いながらも観察され、シナプス前の細胞内カルシウム応答を捉えている可能性があることが示された。 2.脳局所神経シグナル伝達の画像ライブラリーの構築 脳局所神経シグナル伝達の画像ライブラリーを構築して、研究者や一般の興味ある人々に情報提供を行うため、これまでに本研究室で計測・記録した膜電位画像および細胞内カルシウム画像の動画データを、動画のままで情報を提供するための整理・編集を進めた。これまでに、観察記録した膜電位画像および細胞内カルシウム画像について、脳切片の部位、スライス方向、刺激条件、灌流条件(温度、酸塩基平衡)、使用薬物の種類と濃度、測定条件などによって分類した。それらの分類に従って、動画データを変化の経時変化のグラフとともにAVIファイルとして集積し、データベース化を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.神経シグナル伝達を観察しやすい脳切片の作製方法や灌流条件についての基礎的検索として、灌流温度による神経伝達の影響を精査した。体温に近い37℃付近から灌流温度を低下させると、神経の興奮による膜電位や細胞内カルシウムの変化が遅延するばかりでなく、応答も増強することから、麻酔薬等の薬物の影響を観察する場合に灌流温度条件の精密な制御が重要であることがわかった。現在、この灌流条件の制御を確認しながら切片への麻酔薬等の影響の検索を進めていることからデータのとりまとめに時間がかかり、論文としての公表が遅れている。 2.組織学的および生化学的検索に関しては、GABAA受容体サブユニットに対する抗体の選択性と検出感度について引きつづき検討を行っている。 3.脳局所神経シグナル伝達の画像ライブラリーの構築については、膜電位画像および細胞内カルシウム画像の動画データの分類方法を定めた。これまでに、大脳皮質、海馬について、切片のID情報のPDFと動画データを反応の強さの経時変化のグラフとともにAVIファイルとして集積しており、平成25年度にはホームページ(httpファイル)に掲載し、Webで情報提供できる見通しである。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、本研究課題の最終年度であり、平成24年度に引き続き海馬と大脳皮質の興奮伝達についての画像解析を進める。脳切片の灌流条件を精密に制御して実験を進め、脳局所の神経シグナル伝達から麻酔薬の性質とその作用について画像データをとりまとめ論文として発表する。また、本研究において蓄積された脳局所神経シグナル伝達を表す画像データをライブラリーとして編集し、申請者のウェブサイトにアップロードする。興味ある研究者は、利用登録(この際、セキュリティ管理や著作権保護の同意を求める)を行うことで画像データを閲覧できるようにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究計画には当初計画からの大きな変更はない。研究経費は当初計画に準じ、予定支出内訳は、消耗品(薬品、実験動物、実験器具、混合ガス、電子媒体)、成果発表のための旅費、実験補助者への謝金、論文投稿経費などである。基本的に当初計画と大きな変更はないが、研究成果の論文としての公表と脳局所神経シグナル伝達の画像ライブラリー構築とWebでの公表を確実に進めるための費用(論文作成のための英文校正や翻訳、ホームページ作成費用など)を確保する。
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