研究課題/領域番号 |
23592249
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
赤松 繁 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (20167828)
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研究分担者 |
小澤 修 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90225417)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 血小板 / トロンビン / トロンボモジュリン / トロンボポエチン / PAI-1 / 侵害刺激 / 全身性炎症反応症候群 / 凝固障害 |
研究概要 |
過大な侵害刺激から、全身性炎症反応症候群 (systemic inflammatory response syndrome : SIRS) 、周術期心筋虚血、敗血症,多臓器不全に陥る病態において、活性化プロテインCの有用性が指摘され、トロンビンを中心とした凝固・線溶系の病態への関与、治療薬の有用性が再認識されてきている。本研究は、この過大な侵害刺激に反応する生体の血液/血小板・凝固系におけるトロンビンを中心にしたプロテインC活性、トロンボモジュリン、2プラスミンインヒビター、plasmin activator inhibitor-1 (PAI-1) 等の役割を解明し、血小板・凝固線溶系におけるストレス応答の分子基盤の解析を目的とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過大な侵害刺激から、全身性炎症反応症候群 (systemic inflammatory response syndrome : SIRS) 、敗血症、敗血症性ショック、多臓器不全に陥る臨床例において、播種性血管内凝固症候群 (Disseminated Intravascular Coagulation : DIC) を呈した症例の凝固・線溶系の検討を行った。急性期 DIC スコア 4 点以上の症例(血小板は 80,000/l 以下に減少または 24 時間で 50%以上減少)の臨床的検討を行った。重症例では SOFA スコアは10点を超え、血中トロンボモジュリン値は上昇、活性化プロテイン C 値は低下していた。これに対して、遺伝子組み換えトロンボモジュリン投与例は、活性化プロテイン C が上昇した。Fulminant purpuraを呈した重症敗血症における投与例では活性化プロテイン C は上昇とともに、SOFA スコア、DIC スコア、APACHEII スコアは改善し、臓器不全症状の改善を認めた。活性化プロテイン C およびプロテイン S は,過大侵害刺激による重症播種性血管内凝固症候群に対する治療薬としての有用性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
トロンビンはヒト血小板ではprotease-activated receptor (PAR) 1受容体とPAR4受容体を介して血小板の凝集を促進することが知られている。そこでPAR1特異的刺激物質とPAR4特異的刺激物質を作用させて惹起される細胞内情報伝達系の比較解析を行う。正常群と比較することにより、如何なる情報伝達物質が全身性炎症反応症候群 (SIRS) 、周術期心筋虚血、敗血症患者においてトロンビンにより惹起される血小板凝集塊の形成に関与しているかを明らかとする。加えて、トロンボモジュリンおよびトロンボポエチンの関与についても検討する。血小板を用い、シェアーストレス (ずり応力) により刺激され活性化される細胞内情報伝達系[アデニル酸シクラーゼ/cAMP、プロテインキナーゼ A、プロテインキナーゼ C、phosphatidylinositol 3-kinase (PI3-キナーゼ)、Akt/protein kinase B、MAPキナーゼスーパーファミリー (p44/p42 MAP キナーゼ、p38 MAP キナーゼ、SAPK/JNK)、Ca++動員、integrin-beta3、リン酸化ストレス蛋白質27等]を比較検討する。この結果と正常群より得た血小板を用い、シェアーストレス (ずり応力) により活性化されない細胞内情報伝達系を比較検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
培養細胞実験施設としてクリーンベンチ、CO2インキュベーター、恒温振とう器等は既に稼動している設備を使用する。また、蛋白質発現解析に必要なimmuoblot装置および遺伝子発現解析に必要なPCR等も稼動している。さらに免疫組織学的検討に必要な施設(電子顕微鏡および免疫染色用設備)は医学部内共通研究施設を利用する。したがって、本研究経費の大半は培養細胞実験、蛋白質解析および遺伝子発現解析等の検討に要する消耗品費および試薬に充てる。
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