研究課題
過大な侵害刺激から、全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome :SIRS)、周術期心筋虚血、敗血症、多臓器不全に陥る病態において、活性化プロテインCの有用性が指摘され、トロンビンを中心とした凝固・線溶系の病態への関与、治療薬の有用性が再認識されてきている。本研究はこの過大な侵害刺激に反応する生体の血液/血小板・凝固系におけるトロンビンを中心にしたプロテインC活性、トロンボモジュリン、トロンボボエチン、アンチトロンビンIII、プラスミンインヒビター、plasmin antivator inhibitor-1 (PAI-1)等の役割を解明し、血小板・凝固線溶系におけるストレス応答の分子基盤の解析を目的としている。今回、リストセチン(糖蛋白Ib/V/IX活性化因子)による血小板活性化に対するアンチトロンビン-IIIの作用を検討した。その結果、アンチトロンビン-IIIはトロンボキサンA2産生の抑制を介し、リストセチンによる炎症惹起物質の一つであるsoluble CD40 ligandの遊離を阻害することを明らかとした。
2: おおむね順調に進展している
アンチトロンビン-IIIの抗炎症作用の分子機序の一端を明らかとすることが出来た。
トロンビンはヒト血小板ではprotease-activated receptor (PAR)I受容体とPAR4受容体を介して血小板の凝集を促進することが知られている。そこでPAR1特異的刺激物質とPAR4特異的刺激物質を作用させて惹起される細胞内情報伝達系の比較解析を行う。正常群と比較することにより、如何なる情報伝達物質が全身性炎症反応症候群(SIRS)、周術期心筋虚血、敗血症患者においてトロンビンにより惹起される血小板凝集塊の形成に関与しているかを明らかとする。加えて、トロンボモジュリンおよびトロンボポエチンの関与についても検討する。血小板を用い、シェアーストレル(ずり応力)により刺激され活性化される細胞内情報伝達系[アデニル酸シクラーゼ/cAMP、プロテインキナーゼA、プロテインキナーゼC、phosphatidylinositol 3-kinase(PI3-キナーゼ)Akt/protein kinase B、MAPキナーゼスーパーファミリー(p44/p42 MAPキナーゼ、SAPK/JNK)、Ca++動員、integrin-beta3、リン酸化ストレスたんぱく質27等]を比較検討する。この結果と正常群により得た血小板を用い、シェア―ストレス(ずり応力)により活性化されない細胞内情報伝達系を比較検討する。
該当なし
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