研究課題/領域番号 |
23592250
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
栗田 忠代士 浜松医科大学, 医学部附属病院, 准教授 (80303569)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | レミフェンタニル / 出血性ショック / 薬物動態学 |
研究概要 |
本年度は科研申請時の平成24年度に計画した出血性ショック時のレミフェンタニルの薬物動態力学的検討を先に行った。<動物準備>体重25kg前後のブタを10匹用いた。イソフルラン吸入により麻酔を導入し、気管切開、人工呼吸下にイソフルランを呼気終末濃度2%で維持した。大腿動脈に観血的動脈測定ライン(および脱血ライン)、右内頚静脈に肺動脈カテーテル(5F)、中心静脈カテーテル(18G)を留置した。<実験手順>動物準備完了後イソフルランを中止し。プロポフォールを2 mg/kgボーラス投与し、以後6 mg/kg/hrの持続投与した。同時にレミフェンタニルを0.5 µg/kg/minで持続投与開始した。60分後より以後30分間隔で大腿動脈より以下の量を段階的に脱血した。60分後予想循環血液量の10 %(推定全循環血液量体重×70 mlで算定)脱血、90分後10%(合計20%)、120分後10%(30%)、150分後5%(35%)、180分後5%(40%)、210分後5%(45%)、240分後5%(50%)と死亡するまで次の脱血を始める直前に採血をして両薬剤の濃度測定をした。<結果>913±82mlの血液が脱血された。出血性ショックが代償期(体血管抵抗のピークまでと定義、以後を非代償期とみなした)にある状態ではレミフェンタニルの濃度上昇率(%)=2.1×総脱血量(%循環血液量)、プロポフォールの濃度上昇率(%)=0.7×総脱血量(%)で表され、非代償期ではレミフェンタニルの濃度上昇率(%)=27.4×総脱血量(%)、プロポフォールの濃度上昇率(%)=9.5×総脱血量(%)であった。<結論>進行する脱水から出血性ショックの過程においてレミフェンタニルはプロポフォールの約3倍濃度上昇が速い。またどちらも非代償期になると代償期の約15倍濃度が上昇することが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は科研申請時の平成24年度に計画した出血性ショック時のレミフェンタニルの薬物動態力学的検討を先に行ったが、平成24年度予定の研究が平成23年度内に完全に遂行でき、成果を海外誌に掲載することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は科研申請時の平成25年度予定を推進予定であり、平成25年度に平成23年度予定の研究を推進する予定。<平成24年度の研究推進方略>出血性ショック時にオピオイドが脊髄における感受性を変化させるか検討する。<実験手順>ブタのイソフルランの1MACを決定後、0.5MACのイソフルラン投与下に体動抑制に必要なレミフェンタニル濃度を決定する。その後ブタを出血性ショックにして、ショック時の1MACshockを決定後、その0.5MACshock下で体動抑制に必要なレミフェンタニル濃度を決定し、コントロールと比較する。必要量(濃度)の比較により脊髄での感度は変化するのか判明する。<平成25年度の研究推進方略>出血性ショック時のプロポフォールの鎮静、体動抑制効果を同時に調べた我々の以前の実験と同じプロトコールを用い、コントロール群(出血性ショックなし)、ショック後にヒドロキシエチルスターチで蘇生した群、ショック後に輸血(脱血した血液を返血)で蘇生した群でプロポフォールの効果を調べ、プロポフォールの薬物動態力学的変化を比較する。出血によって増強する効果を回復できるか検討する。<実験手順>上記3群のいずれかの病態を作成後、プロポフォールを中心静脈ルートより50mg/kg/hで持続投与を開始する。投与開始から2分毎に大腿動脈より採血し(濃度測定用)、自発的体動がみられるまで採血を2分毎繰り返す。同時に2分毎、上肢を鉗子でクランプし、体動がみられるか観察。もし体動がみられなくなったら、次の採血ポイントでプロポフォールの持続投与を中止する。この間、脳波も記録し、鎮静および体動の両方の薬物力学的反応をプロポフォール濃度と解析する。1匹の動物で、その病態における鎮静と体動についての結果を得ることができ、かつ二つの蘇生法でプロポフォールの薬物動態力学的変化がどのように変化するか判明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
科研申請時と同様に実験に必要な消耗品(ブタおよび使用薬剤、測定キットなどが主体)を中心に使用する予定である。平成23年度は成果を発表するための学会旅費がなかったが、平成24年度に23年度の研究成果を発表する予定である。
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