<実験概要>本年度は科研申請時の計画を変更し、新たに近年本邦の全身麻酔で頻用されるレミフェンタニルの薬物動態が術中さまざまな要因で変動する心拍出量の変化によってどのように影響を受けるか、その変化はレミフェンタニルと同時使用されることがきわめて多いプロポフォールと違いがあるのか、ブタにおいて検討した。 <動物準備>体重25kg前後のブタを10匹用いた。イソフルラン吸入により麻酔を導入し、気管切開、人工呼吸下にイソフルランを1.5%で維持した。大腿動脈に観血的動脈測定ライン(および脱血ライン)、右内頚静脈に肺動脈カテーテル(心拍出量測定用)、中心静脈カテーテル(レミフェンタニルおよびプロポフォール投与ルート)を留置した。 <実験手順>動物準備完了後、レミフェンタニルを0.5 microg/kg/minで開始し同時にプロポフォールを2 mg/kgボーラス投与後6 mg/kg/hで持続投与した。安定後に基準値(基準値1)を測定完了後、ドブタミン20 microg/kg/min投与およびイソフルラン中止により心拍出量を増加させ60分間維持した(高心拍出量状態)。次にドブタミンを中止およびイソフルランを再開し60分間維持し基準値に戻した(基準値2)。最後にイソフルランを3%に増加させ60分間維持し心拍出量を低下させた(低心拍出状態)。それぞれの状態で血行動態およびレミフェンタニル、プロポフォール濃度を測定した。 <結果>心拍出量の増加または低下に伴いレミフェンタニル、プロポフォール濃度は低下または増加した。それぞれ濃度は以下の式で表された。レミフェンタニル濃度(ng/ml) = 17.5/心拍出量(l/min)+4.52;プロポフォール濃度(microg/ml) = 3.34/心拍出量(l/min)。両薬剤の心拍出量変化に対する濃度変化への影響は同程度であったが、心拍出量低下時に特に濃度への影響が大きかった。
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