今後の研究の推進方策 |
実験結果が不安定となった最大の要因は、ヒト肺動脈内皮細胞の培養において、培養日数が4日間では不十分なことであり、その適切な培養日数を設定することが重要である。他の実験結果からは10日間ほど必要と見込まれるので、その適切な培養日数を確定することが最優先課題である。それを確定させたら、次に適切なneuropeptide Yの濃度範囲を確定する。その上で、neuropeptide Yが肺血管内皮細胞に直接働きかけて、透過性を亢進させているかどうかを見極める。 その上で、さまざまな細胞内メッセンジャーの阻害薬を使用し、どの経路がneuropeptide Yによる肺血管透過性更新に関与しているかを明らかとする。 また、ラット脳死モデルでの神経原生肺水腫発生に関わるneuropeptideの検討を進める。具体的にはラットをペントバルビタール腹腔内投与によって麻酔後、動静脈にカニュレーション、気管切開し人工呼吸管理とした後、伏臥位として大後頭孔経由で第四膿室にカニューレを留置し、生理食塩水注入により体血圧以上の脳圧としてラット脳死モデルを作成する。その後6時間に渡って血液ガス分析による肺障害を評価すると共に、血液を採取し、NPY, CGRP, substance Pを測定し、6時間後にBALを行った後に肺を摘出する。肺のWet/Dry Ratio、肺組織のNPY, CGRP含有量の測定などを行い、肺水腫発生とNPY,CGRP, substance Pとの関連を探る。 肺水腫発生に関わるneuropeptideの拮抗薬(NPY-Y3受容体アンダゴニストであるNPY(18-36)など)の前投与、脳死作成直後の投与等の条件で同じ実験を繰り返し、それら拮抗薬の肺水腫発生予防および治療効果について検討する。
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