研究課題
Neuropeptide Y(NPY)の細胞レベルでの血管内皮細胞透過性亢進作用の検討を行うため、引き続きin vitro血管内皮モデルの再構築を行った。今までのin vitro血管内皮モデル(ダブルチャンバー法)では、コラーゲンコートがインターセル下部の膜表面の孔を塞いでしまい、透過性の結果に影響を与える可能性があることと、インターセルの膜孔を塞がないようにコラーゲン濃度を下げてコーティングを行うと培養した細胞が剥がれる、ということが判明した。そこで、新たにin vitro血管内皮モデルの構築を行うために、デバイスの変更(下部に1 µmの孔を持つ膜のついた、細胞染色も可能な他メーカーのインターセルの導入)を行い、ヒト肺血管内皮培養細胞が単層形成する培養条件の検討を行った。そして、インターセル内にヒト肺血管内皮培養細胞を8.5 x 105 cells/cm2で播種し、インターセル外側のウェル中にも液高が等しくなるように培地を入れ、3日間培養することが最適条件であることを見出した(細胞染色で単層形成確認)。また、インターセル内への蛍光標識アルブミン添加の後、外側のウェルへのアルブミンの移行を観察する透過性の評価では、上記培養条件下での細胞でアルブミンの移行が有意に抑制されており、このin vitro血管内皮モデルは、実際の血管内皮細胞に見られるバリア機能も再現できていることが示唆された。この新規in vitro血管内皮モデルを用いて、既報の血管内皮細胞透過性亢進物質である、Lipopolysaccharide、Tumor Necrosis Factor-α(TNF-α)、Bradykinin、Vascular Endothelial Growth Factor、Histamineについて作用を検討したところ、全ての物質において有意な透過性亢進作用を確認した。
4: 遅れている
今まで用いていたin vitro血管内皮モデル(ダブルチャンバー法)の問題点が確認され、その再構築に1年近く要してしまったので、遅れてしまった。しかし、血管透過性を測定するのに最適な条件を見つけることが出来たので、今後は順調に進むものと思われる。
血管内皮細胞透過性亢進作用を評価できる新規in vitro血管内皮モデルを用いて、NPYの作用について再度評価を行う。幅広い濃度範囲(10-11~10-7 M)および幅広い反応時間(0.5~24時間)でNPYの細胞透過性亢進作用の有無を検討する。透過性亢進作用が観察された場合は、最適の反応観察条件を決定する。その上で、様々な細胞内シグナルの阻害剤を用い、NPYの肺血管透過性亢進メカニズムを薬理学的に解明していく。一方、透過性亢進作用が観察されなかった場合は、異なる酸素条件下(5%酸素濃度)や生体内でNPYと共存するノルアドレナリンを添加した条件下での作用の有無を検討する。そこで作用が確認された場合は上記と同様の手法で作用メカニズムの解明を行う。また、ラット脳死モデルでの神経原性肺水腫発生における神経ペプチドの関与を検討する。具体的には、ラットをペントバルビタール腹腔内投与により麻酔処置した後、動静脈カニュレーション、気管切開し人工呼吸管理とする。腹臥位として大後頭孔経由で第四脳室にカニューレを留置し、生理食塩水注入により体血圧以上の脳圧としてラット脳死モデルを作製する。その後6時間に渡って血液ガス分析により脳障害を評価すると共に血液を採取し、NPY、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、Substance Pを測定し、6時間後に気管支肺胞洗浄(BAL)を行った後に肺を摘出する。肺のWet/Dry Ratio、肺組織のNPY、CGRP含有量の測定などを行い、肺水腫発生と神経ペプチドとの関連を探る。肺水腫発生に関与する神経ペプチドの拮抗薬(NPY-Y3受容体アンタゴニストであるNPY(18-36)など)の前投与や脳死作成直後の投与などの条件で実験を行い、それら拮抗薬の肺水腫発生予防・治療効果について検討する。
研究費は、培養細胞やその他の培地、蛍光標識アルブミンなどの消耗品、および学会での情報収集や発表のための旅費に使用予定である。
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