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2012 年度 実施状況報告書

脳死関連肺障害の病態解明と予防・治療法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 23592251
研究機関名古屋大学

研究代表者

西脇 公俊  名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10189326)

キーワード脳死 / 肺移植 / 神経原生肺水腫 / ARDS / 肺血管透過性 / neuropeptide Y
研究概要

Neuropeptide Y(NPY)の細胞レベルでの血管内皮細胞透過性亢進作用の検討を行うため、引き続きin vitro血管内皮モデルの再構築を行った。今までのin vitro血管内皮モデル(ダブルチャンバー法)では、コラーゲンコートがインターセル下部の膜表面の孔を塞いでしまい、透過性の結果に影響を与える可能性があることと、インターセルの膜孔を塞がないようにコラーゲン濃度を下げてコーティングを行うと培養した細胞が剥がれる、ということが判明した。
そこで、新たにin vitro血管内皮モデルの構築を行うために、デバイスの変更(下部に1 µmの孔を持つ膜のついた、細胞染色も可能な他メーカーのインターセルの導入)を行い、ヒト肺血管内皮培養細胞が単層形成する培養条件の検討を行った。そして、インターセル内にヒト肺血管内皮培養細胞を8.5 x 105 cells/cm2で播種し、インターセル外側のウェル中にも液高が等しくなるように培地を入れ、3日間培養することが最適条件であることを見出した(細胞染色で単層形成確認)。また、インターセル内への蛍光標識アルブミン添加の後、外側のウェルへのアルブミンの移行を観察する透過性の評価では、上記培養条件下での細胞でアルブミンの移行が有意に抑制されており、このin vitro血管内皮モデルは、実際の血管内皮細胞に見られるバリア機能も再現できていることが示唆された。
この新規in vitro血管内皮モデルを用いて、既報の血管内皮細胞透過性亢進物質である、Lipopolysaccharide、Tumor Necrosis Factor-α(TNF-α)、Bradykinin、Vascular Endothelial Growth Factor、Histamineについて作用を検討したところ、全ての物質において有意な透過性亢進作用を確認した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

今まで用いていたin vitro血管内皮モデル(ダブルチャンバー法)の問題点が確認され、その再構築に1年近く要してしまったので、遅れてしまった。しかし、血管透過性を測定するのに最適な条件を見つけることが出来たので、今後は順調に進むものと思われる。

今後の研究の推進方策

血管内皮細胞透過性亢進作用を評価できる新規in vitro血管内皮モデルを用いて、NPYの作用について再度評価を行う。幅広い濃度範囲(10-11~10-7 M)および幅広い反応時間(0.5~24時間)でNPYの細胞透過性亢進作用の有無を検討する。透過性亢進作用が観察された場合は、最適の反応観察条件を決定する。その上で、様々な細胞内シグナルの阻害剤を用い、NPYの肺血管透過性亢進メカニズムを薬理学的に解明していく。一方、透過性亢進作用が観察されなかった場合は、異なる酸素条件下(5%酸素濃度)や生体内でNPYと共存するノルアドレナリンを添加した条件下での作用の有無を検討する。そこで作用が確認された場合は上記と同様の手法で作用メカニズムの解明を行う。
また、ラット脳死モデルでの神経原性肺水腫発生における神経ペプチドの関与を検討する。具体的には、ラットをペントバルビタール腹腔内投与により麻酔処置した後、動静脈カニュレーション、気管切開し人工呼吸管理とする。腹臥位として大後頭孔経由で第四脳室にカニューレを留置し、生理食塩水注入により体血圧以上の脳圧としてラット脳死モデルを作製する。その後6時間に渡って血液ガス分析により脳障害を評価すると共に血液を採取し、NPY、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、Substance Pを測定し、6時間後に気管支肺胞洗浄(BAL)を行った後に肺を摘出する。肺のWet/Dry Ratio、肺組織のNPY、CGRP含有量の測定などを行い、肺水腫発生と神経ペプチドとの関連を探る。肺水腫発生に関与する神経ペプチドの拮抗薬(NPY-Y3受容体アンタゴニストであるNPY(18-36)など)の前投与や脳死作成直後の投与などの条件で実験を行い、それら拮抗薬の肺水腫発生予防・治療効果について検討する。

次年度の研究費の使用計画

研究費は、培養細胞やその他の培地、蛍光標識アルブミンなどの消耗品、および学会での情報収集や発表のための旅費に使用予定である。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (4件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] A prospective randomized multicenter comparative study of BLM-240 (desflurane) versus sevoflurane in Japanese patients2013

    • 著者名/発表者名
      Junzo Takeda, Akiyoshi Namiki, Makoto Ozaki, Kazuhiko Fukuda, Kiyoshi Morita, Yuichi Kanmura, Michiaki Yamakage, Takami Komatsu, Eiichi Inada, Ryouichi Kawate, Kimitoshi Nishiwaki, et al.
    • 雑誌名

      J Anesthesia

      巻: e-pub ページ: e-pub

    • DOI

      10.1007/s00540-012-1536-x

    • 査読あり
  • [雑誌論文] WHO手術安全のガイドライン2013

    • 著者名/発表者名
      西脇公俊、市川高夫
    • 雑誌名

      臨床麻酔

      巻: 37 ページ: 19-26

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 気管挿管後に直達喉頭鏡刺激で高度徐脈を呈した1例2012

    • 著者名/発表者名
      足立裕史、田中克治、鈴木章悟、西脇公俊、松田直之
    • 雑誌名

      臨床麻酔

      巻: 36 ページ: 963-964

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 術後脳梗塞が2度の再気管挿管の要因になったと考えられた1症例2012

    • 著者名/発表者名
      足立裕史、市川 崇、貝沼関志、西脇公俊、山本尚範、松田直之
    • 雑誌名

      日本集中治療医学会雑誌

      巻: 19 ページ: 699-700

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ICUにて診断治療に難渋した術後症例の紹介2012

    • 著者名/発表者名
      貝沼関志、市川 崇、金 碧年、西脇公俊
    • 雑誌名

      日本臨床麻酔学会誌別冊

      巻: 32 ページ: 507-512

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 術前・術後管理必携 無機肺2012

    • 著者名/発表者名
      青山 正、西脇公俊
    • 雑誌名

      消化器外科

      巻: 4 ページ: 856-858

  • [学会発表] NO吸入によって酸素化の改善をえた再膨張性肺水腫の一例2013

    • 著者名/発表者名
      鈴木克尚、貝沼関志、武田真輔、水野祥子、萩原伸昭、青山 正、市川 崇、高橋英夫、西脇公俊
    • 学会等名
      第40回 日本集中治療医学会
    • 発表場所
      長野県松本文化会館(松本)
    • 年月日
      20130228-20130302
  • [学会発表] 胸腺全摘術を施行後、術後早期に急激な呼吸状態悪化を認めた重症筋無力症の一例2012

    • 著者名/発表者名
      橋本真知子、鈴木章悟、水野祥子、青山 正、貝沼関志、西脇公俊
    • 学会等名
      第32回 日本臨床麻酔学会
    • 発表場所
      ビッグパレットふくしま(福島)
    • 年月日
      20121101-20121103
  • [学会発表] 血管内皮細胞の増殖・分化に与える静脈麻酔薬の影響2012

    • 著者名/発表者名
      江間義郎、鈴木章悟、西脇公俊
    • 学会等名
      第59回 日本麻酔科学会
    • 発表場所
      神戸ポートピアホテル(神戸)
    • 年月日
      20120607-20120609
  • [学会発表] 大学病院ならではの麻酔科研修2012

    • 著者名/発表者名
      赤根亜希子、西脇公俊
    • 学会等名
      第59回 日本麻酔科学会
    • 発表場所
      神戸ポートピアホテル(神戸)
    • 年月日
      20120607-20120609
  • [図書] 心臓手術の実際 大動脈原理ン拡大術の麻酔2013

    • 著者名/発表者名
      菅 康二郎、西脇公俊
    • 総ページ数
      111-114
    • 出版者
      秀潤社

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公開日: 2014-07-24  

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