研究課題/領域番号 |
23592254
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
林 行雄 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60294063)
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研究分担者 |
上林 卓彦 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10273640)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 脳死 / 心機能 / サバイバル蛋白 |
研究概要 |
昨年度はラット脳死モデルを用いて脳死後の循環動態の変化をコンダクタンスカテーテルで詳細に測定し、脳死に伴う心機能不全におけるphosphatidylinositol 3-kinase (PI3K)の役割について検討した。続いて、脳死後の心筋を摘出し、Western blottingを用いて、PI3Kのターゲット蛋白のひとつであり、サバイバル蛋白という異名があるAktのリン酸化について検討した。 結果は以下の通りである。 1.PI3Kの阻害剤であるワルトマニンを投与することにより脳死ラットにおける生存率が改善し、血圧の変化はあまり明確ではなかったが、主に脳死2時間以降の心機能(駆出率、dP/dT max)がワルトマニン投与により有意に改善した。 2.Aktのリン酸化をwestern blottingにて検討したところ、脳死に伴いAktのリン酸化の増強が認められたもののワルトマニンによりそのリン酸化の増強が阻害された。 これらのin vivoおよびin vitroの研究結果から、脳死に伴う心機能不全においてはPI3Kの活性化が関与し、それがAktのリン酸化をもたらすことが明らかとなった。ただし、Aktのリン酸化がどのように心機能不全を招くのかは今後の課題として残った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳死における心機能不全をphosphatidylinositol 3-kinaseの阻害薬であるワルトマニンで抑制できたことはこの研究課題においてphosphatidylinositol 3-kinaseがキー蛋白のひとつと考えた実験計画に矛盾のない結果であった。この予想された結果を受けて、今後はphosphatidylinositol 3-kinaseの活性化が具体的にどのようなメカニズムで脳死後の心機能不全に至るかの検討に移りたい。その意味で研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
phosphatidylinositol 3-kinaseの活性化に伴い、Aktのリン酸化が起こることは証明できたので、今後はAktの働きについて焦点を当てて、研究を進めていきたい。Aktはサバイバル蛋白とう異名を持ち、深くアポトーシスに関与していることが知られているが、それは機能の一面にしかすぎず、ほかにも多彩な働きがあることが知られている。Aktのターゲットになるタンパクのひとつとして、筋小胞体のphospholamban (PLB)があり、この蛋白は細胞内のカルシュムハンドリングに深く関与し、心機能とも密接に関係している。そこで、今後の具体的なターゲットとしてPLBに注目して、研究を発展させたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
脳死ラットにおける循環動態の変化にphospholamban (PLB)がどのように関与しているかの検討を行う。研究経費は実験動物の購入、コンダクタンスカテーテルの購入、さらに脳死に伴うphospholamban (PLB)の変化について検討するため、そのwestern blottingによる評価を確立したいので、抗体等の試薬購入に当てる予定である。
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