研究課題/領域番号 |
23592256
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
小林 茂樹 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (90397993)
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研究分担者 |
山本 健 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50363122)
矢野 雅文 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (90294628)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ダントロレン / 心室頻拍症 / 悪性高熱症 / 心不全 / カテコラミン誘発性心室頻拍 |
研究概要 |
本研究は、骨格筋および心筋筋小胞体(SR)のCa2+放出チャネルであるリアノジン受容体(RyR)の点突然変異病として知られる悪性高熱症(Malignant Hyperthermia:MH), 催不整脈性右室異形成 (ARVC)/カテコラミン誘発性心室頻拍 (CPVT)、および心不全に合併した心室頻拍(VT)の患者のRyRを分子標的とした根本的治療法の開発と実臨床への応用(translational research)を目的とするものである。心不全に合併した心室頻拍症に対して、ダントロレン投与の安全性と投与量を調べた(平成23年)。虚血性心筋症による心不全および持続性心室頻拍に対する 治療目的で入院中となった74歳の男性にダントロレンの内服治療を開始した(臨床試験第1例目)。ダントロレン投与前とダントロレン慢性投与後(ダントロレン150mg/日、30日間)で、電気生理学的検査を行い、薬効評価を行った。ダントロレン投与前の電気生理学的検査では、2連刺激(S1S2=300 msec)で再現性をもって心室頻拍(200bpm)が誘発されたが、ダントロレン慢性投与後には、心室頻拍は誘発されなかった。その後、ダントロレンの持続投与(内服治療)を行っているが、投与前に見られた持続性心室頻拍は投与後に出現しなくなった。ダントロレンの内服治療を12ヶ月継続しているが、副作用は出現していない。また、ダントロレンの心機能に及ぼす影響を評価するために、心エコー、脳性利尿ペプチド(BNP)経過を見ているが、ダントロレンには心抑制がないことが明らかとなった。このように、心機能の低下した心不全患者の心室頻拍に対して、ダントロレンは、心抑制がなく、抗不整脈作用も強いことを経験した。さらに安全性、有効性を検討するために、より多くの症例検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、骨格筋および心筋筋小胞体(SR)のCa2+放出チャネルであるリアノジン受容体(RyR)の点突然変異病として知られる悪性高熱症(Malignant Hyperthermia:MH), 催不整脈性右室異形成 (ARVC)/カテコラミン誘発性心室頻拍 (CPVT)、および心不全に合併した心室頻拍(VT)の患者のRyRを分子標的とした根本的治療法の開発と実臨床への応用(translational research)を目的とするものである。これまで、基礎研究(動物実験)において、ダントロレンの心不全・致死的不整脈に対する有効性を報告してきたが、今回、世界ではじめて、ヒトの心疾患に対する有効性を報告した。しかも、1年にわたって、その安全性、有効性をモニターした結果、ダントロレンが、新しい心不全・致死的不整脈の治療薬として有効である可能性が示された。しかしながら、十分な安全性、有効性を確認するためには、より多くの症例検討が必要である。そういう意味で、現在までの達成度は25%程度である。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度は、ダントロレンの心不全・致死的不整脈に対する有効性を報告してきたが、今回、世界ではじめて、ヒトの心疾患に対する有効性を確認し得た。しかしながら、プロトコール上、心疾患を基礎疾患に持つ心室頻拍患者で、通常の治療(β遮断薬、アミオダロン)抵抗性の症例に対して臨床試験を行うためエントリーできる症例に限界がある。実際に、平成23年度は1例しかエントリーできなかった。したがって、より多くの症例をエントリーするために、関連病院への本臨床試験への協力や、多施設共同研究の推進を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究は、骨格筋および心筋筋小胞体(SR)のCa2+放出チャネルであるリアノジン受容体(RyR)の点突然変異病として知られる悪性高熱症(Malignant Hyperthermia:MH), 催不整脈性右室異形成 (ARVC)/カテコラミン誘発性心室頻拍 (CPVT)、および心不全に合併した心室頻拍(VT)の患者のRyRを分子標的とした根本的治療法の開発と実臨床への応用(translational research)を目的とするものである。研究方法としては、1)MHに対する新薬の開発 2)心疾患を有する心室頻拍症に対するダントロレンの臨床応用である。1)に関しては、予定通り、研究計画に則って研究を進める。2)に関しては、ダントロレン臨床試験にかかる経費・英文校正費などにあてる。
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