研究課題/領域番号 |
23592256
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
小林 茂樹 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (90397993)
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研究分担者 |
山本 健 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (50363122)
矢野 雅文 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90294628)
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キーワード | 悪性高熱症 / 心室頻拍症 / 心不全 / ダントロレン / リアノジン受容体 |
研究概要 |
悪性高熱症 (MH)、不整脈原性右室心筋症、カテコラミン誘発性多型性心室頻拍症(CPVT)、心不全においては、リアノジン受容体(骨格筋型:RyR1,心筋型:RyR2)内のN-terminal domainとCentral domainのドメイン連関障害が、RyRsからのCa2+漏出の原因と考えられている。最近、我々は、MHの治療薬であるダントロレンは、RyR1のN-terminal domainに結合し、これらのドメイン連関障害を是正することによりRyR1からのCa2+漏出を抑制するという新しい分子作用機序を報告した(Kobayashi et al, J Biol Chem.2005;280:6580-7)。そこで、イヌ心不全モデルとCPVT型knock-in マウスを用いてダントロレンの心不全やCPVTに対する効果を検討した。イヌ心不全モデルにおいては、ダントロレンが、不全心筋の異常リアノジン受容体を分子標的とし、心筋細胞機能を改善させ、新しい心不全・不整脈治療薬になる可能性があることをin vivoおよびin vitroの実験で初めて証明した(J Am Coll Cardiol. 2009; 53:1993-2005)。ヒトRyR点突然変異モデルのCPVT型knock-in マウス(R2474S/+)においては、ダントロレンがRyR2からのCa2+ 漏出を抑制することにより、トレッドミル運動誘発性あるいはエピネフリン誘発性心室頻拍を完全に抑制することを報告した(Circ J. 2010;74:2579-84)。ダントロレンは、通常の臨床投与量では、心抑制がなく、従来の抗不整脈薬や心不全治療薬とは全く異なった作用機序(異常リアノジン受容体を分子標的)を持つことから、心機能の低下した心不全患者や薬物抵抗性の致死的不整脈に対しする新しい治療薬となることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請者らは平成23年から、ヒト心不全患者のダントロレンの心室頻拍に対する有効性と安全性を検討するための臨床試験(YUMIN4346)を開始し、その安全性と有効性を確認した。平成23年度と平成24年度で基礎心疾患を有する心機能の低下した心室頻拍の2症例に対して、ダントロレンの臨床試験を行い、ダントロレンは心抑制がなく、抗不整脈効果を有することが確認された。ダントロレンは、心抑制がなく、従来の抗不整脈薬や心不全治療薬とは全く異なった作用機序(異常リアノジン受容体を分子標的)を持つことから、心機能の低下した心不全患者や薬物抵抗性の致死的不整脈に対する新しい治療薬となることが期待される。目標症例数は10例であることから、現在までの達成度は20%である。
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今後の研究の推進方策 |
ダントロレンのトランスレーショナルリサーチに関しては、骨格筋疾患である悪性高熱症の分子学的作用機序の提唱から心疾患である心不全モデル、不整脈モデルでの有効性の証明、ヒト臨床試験での安全性・有効性が確認できており、世界的にも注目を集めている。大学病院1施設だけでは、症例の登録に時間がかかるため、山口県内の関連病院による多施設共同臨床試験を施行する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究は、骨格筋および心筋筋小胞体(SR)のCa2+放出チャネルであるリアノジン受容体(RyR)の点突然変異病として知られる悪性高熱症(Malignant Hyperthermia:MH), 催不整脈性右室異形成 (ARVC)/カテコラミン誘発性心室頻拍 (CPVT)、および心不全に合併した心室頻拍(VT)の患者のRyRを分子標的とした根本的治療法の開発と実臨床への応用(translational research)を目的とするものである。研究方法としては、1)MHに対する新薬の開発 2)心疾患を有する心室頻拍症に対するダントロレンの臨床応用である。1)に関しては、予定通り、研究計画に則って研究を進める。2)に関しては、山口県内での他施設臨床試験ダントロレン臨床試験にかかる経費・英文校正費などにあてる。
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