研究課題/領域番号 |
23592259
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
北野 敬明 大分大学, 医学部, 教授 (20211196)
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研究分担者 |
徳丸 治 大分大学, 医学部, 准教授 (40360151)
横井 功 大分大学, 医学部, 教授 (80150366)
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キーワード | 核磁気共鳴法 / 電子スピン共鳴法 / 脳虚血 / 脳保護 / クレアチンリン酸 / ATP / αリポ酸 / 病態生理学 |
研究概要 |
1.燐を観測核とする核磁気共鳴法による脳エネルギー代謝の測定 エーテル麻酔下にラットを断頭,速やかに大脳スライスを作成し,酸素化した10 mMブドウ糖加人工脳脊髄液(ACSF)で灌流し,燐を観測核とする核磁気共鳴法(31P-NMR)により高エネルギー燐酸のスペクトルを測定した。この実験系を用いて,水溶性αリポ酸誘導体であるジヒドロリポイル-ヒスチジン亜鉛キレート化合物(DHL-HisZn)の,脳虚血-再灌流傷害に対する神経保護作用を検討した。DHL-HisZnの濃度を 1,10,100,1000 μM と変化させ,虚血-再灌流傷害からのクレアチン燐酸の回復を測定したところ,10 および 100μM において対照群と比較して有意に良好な回復が認められたが, 1μM および 1 mMではその効果は認められず,ベル型の濃度依存性をもつ神経保護効果がみられた。ATPのレベルやNAD+/NADHには差が認められなかった。 2.電子スピン共鳴法によるDHL-HisZnのラジカル除去能の測定 DHL-HisZnによるフリーラジカルの除去能をDMPO及びCYPMPOをスピントラップ剤として用いた電子スピン共鳴法(ESR)により測定した。スーパーオキサイドアニオン(UV法で発生,EC50 2 mM),DPPHラジカル(EC50 0.14 mM),アスコルビルラジカル(松本法で発生,EC50 2 mM)に対してフリーラジカル除去能が認められた。ヒドロキシルラジカルに対しては,UV照射法による発生系では1 mM以上でむしろラジカルの増加を認めたが,フェントン反応による発生系では除去能が認められた。また,チオバルビツール酸反応物質法による評価では,ヒドロキシルラジカル(EC50 0.7 mM)及び炭素ラジカル(EC50 21 mM)に対して抗酸化能を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
31P-NMRによる虚血-再灌流傷害に対するDHL-HisZnの脳保護効果の評価により,その至適濃度が判明した。また,ESRによりスーパーオキサイドアニオンを含むフリーラジカルの除去能の評価を行った。脱分極負荷モデルによる検討や組織学的検討など,2年目までに実施予定の項目のうち一部未実施の項目もあるが,DHL-HisZnの脳保護作用について多角的なアプローチによる解析が着々と進んでおり,おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
DHL-HisZnの脳保護作用における神経細胞とグリア細胞の役割を解明するため,グリア細胞に対して選択的毒性をもつフルオロ酢酸を人工脳脊髄液に添加して引き続き実験を行う。また,UV照射によるヒドロキシラジカル発生系において,DHL-HisZnの添加によってヒドロキシルラジカルの発生量が増えた事象について,さらに詳細な検討を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の予定通り,フルオロ酢酸など31P-NMRの実施に必要な試薬類の購入やESRのスピントラップ剤であるDMPOやCYPMPO,ラジカル発生系の試薬など必要な試薬や,NMR用試験管,灌流用チューブ,ESR用ディスポーザブル扁平セルなど消耗品の購入費として使用する。また,研究成果を国際学会で発表するための旅費や国際英文誌への発表のための英文校閲費などとしても使用する。
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