研究課題/領域番号 |
23592264
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
南 浩一郎 自治医科大学, 医学部, 講師 (70279347)
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研究分担者 |
横山 徹 自治医科大学, 医学部, 助教 (80425321)
上園 保仁 独立行政法人国立がん研究センター, その他部局等, その他 (20213340)
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キーワード | オピオイド受容体 / キメラ受容体 / 麻酔薬 / 鎮痛薬 / トラマドール / セボフルラン / イソフルラン / リン酸化 |
研究概要 |
オピオイド受容体に対する麻酔薬の直接作用はほとんど解明されていなかったが、アフリカツメガエル卵母細胞発現系にGq型G蛋白とGi型G蛋白のキメラを用いる手法を用いて、オピオイド受容体機能をリアルタイムに解析する方法を開発し解析を可能にした。今回の研究はこの実験系を用いてオピオイド受容体に対する麻酔薬の作用を電気生理学的に解析することであるが、昨年度までの研究ではµOR-Gi/qをアフリカツメガエル卵母細胞発現系に同時に発現させた方法を用いてオピオイド受容体に対する静脈麻酔薬(プロポフォール、ケタミン、トラマドール、ペントバルビタール)と吸入麻酔薬(ハロセン、イソフルラン、セボフルラン、エンフルラン)の作用を電気生理学的に比較解析した結果、オピオイド受容体ヘの吸入麻酔薬、静脈麻酔薬の抑制作用が確認された。特に、トラマドールが直接オピオイド受容体を作用するという、今までになかった結果を獲得され、トラマドールの鎮痛作用の本質を確認することができた。25年度は麻酔薬のµOR-Gi/qまたはδOR- Gi/qに対する抑制効果のメカニズム検討を置くことを目標において以下の研究をおこなう(1)µOR-Gi/qまたはδOR- Gi/qに対する静脈麻酔薬(プロポフォール、ケタミン、トラマドール、ペントバルビタール)と吸入麻酔薬(ハロセン、イソフルラン、セボフルラン、エンフルラン)の抑制作用にリン酸化酵素が関与するのかどうかを確かめる(2)µOR-Gi/qまたはδOR- Gi/qに対するリン酸化部位のアミノ酸を他のアミノ酸へ変換させた受容体を用いてリン酸化が抑制メカニズムかどうかを確認する。本研究の成果は着実になされており、優れたバランス麻酔にどのような麻酔薬が最適なのかという臨床麻酔に有用な情報が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
オピオイド受容体に対する麻酔薬の直接作用は解明されていなかったが、我々が開発したアフリカツメガエル卵母細胞発現系にGq型G蛋白とGi型G蛋白のキメラを用いる手法を用いて、オピオイド受容体機能をリアルタイムに解析しオピオイド受容体に対する麻酔薬の作用を電気生理学的に解析することができた。昨年度までの研究ではµOR-Gi/qまたはδOR- Gi/qをアフリカツメガエル卵母細胞発現系に同時に発現させた方法を用いてµオピオイド受容体に対する静脈麻酔薬(プロポフォール、ケタミン、トラマドール、ペントバルビタール)と吸入麻酔薬(ハロセン、イソフルラン、セボフルラン、エンフルラン)の作用を電気生理学的に比較解析した結果、µオピオイド受容体ヘの吸入麻酔薬(ハロセン、イソフルラン、セボフルラン、エンフルラン)の抑制作用を証明するることができ、静脈麻酔薬プロポフォールはµオピオイド受容体へは影響を及ぼさないことも確認した。この結果は静脈麻酔薬とオピオイド作用薬は干渉しないことを意味しており、完全静脈麻酔薬の優位性を示す結果であると考えられた。また今回の実験によりトラマドールの作用についてもかなりの成果が累積されている。トラマドールはさまざまな薬理機序が言われて来たが、今回の実験によりオピオイド受容体への直接作用を証明することができた(平成24年度日本麻酔学会にて発表予定)。今回までは麻酔薬のオピオイド受容体への作用を示す結果が得られ、おおむね本研究の課題を達成することができたのではないかと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
アフリカツメガエル卵母細胞発現系にGq型G蛋白とGi型G蛋白のキメラを用いる手法を用いて、オピオイド受容体に対する麻酔薬の作用を電気生理学的に解析できた。いままでの研究ではµOR-Gi/qまたはδOR- Gi/qをアフリカツメガエル卵母細胞発現系に同時に発現させた方法を用いてオピオイド受容体に対する吸入麻酔薬の作用を電気生理学的に比較解析した結果、オピオイド受容体ヘの吸入麻酔薬の作用が確認された。静脈麻酔薬プロポフォールはµオピオイド受容体へは影響を及ぼさないことが確認され、この結果は静脈麻酔薬はµオピオイド作用薬は干渉しないことを意味しており、完全静脈麻酔薬の優位性を示す結果であると考えられた。今回の実験によりトラマドールの作用についても飛躍的な成果が上がっている。トラマドールはさまざまな薬理機序が言われて来たが、今回の実験によりオピオイド受容体への直接作用を証明することができた(平成24年度日本麻酔学会にて発表予定)。これらの結果をもとに25年度は麻酔薬のµOR-Gi/qまたはδOR- Gi/qに対する抑制効果のメカニズム検討を置くことを目標において以下の研究を考えている (1)µOR-Gi/qまたはδOR- Gi/qに対する静脈麻酔薬(プロポフォール、ケタミン、トラマドール、ペントバルビタール)と吸入麻酔薬(ハロセン、イソフルラン、セボフルラン、エンフルラン)の抑制作用にリン酸化酵素が関与するのかどうかを確かめる。 (2)µOR-Gi/qまたはδOR- Gi/qに対するリン酸化部位のアミノ酸を他のアミノ酸へ変換させた受容体を用いてリン酸化が抑制メカニズムかどうかを確認する。 本研究の成果は着実になされており、麻酔薬のオピオイド受容体への作用を詳細に解析でき臨床麻酔に有用な情報が期待される。
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次年度の研究費の使用計画 |
現在までに得られた結果をもとに25年度は麻酔薬のµOR-Gi/qまたはδOR- Gi/qに対する抑制効果のメカニズム検討を置くことを目標において以下の研究を考えている。そのために以下の物品に研究費を使用する。 静脈麻酔薬(プロポフォール、ケタミン、トラマドール、ペントバルビタール)吸入麻酔薬(ハロセン、イソフルラン、セボフルラン、エンフルラン)の薬剤費、燐酸化酵素阻害薬、燐酸化酵素刺激薬などの薬剤費、アフリカツメガエル、および飼育費、リン酸化部位のアミノ酸を他のアミノ酸へ変換させた受容体の作成費(高額が予想される)など。また、研究成果を発表するための論文作成に伴う、校正費、投稿料、掲載料、別冊料などに使用する
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