研究概要 |
癌患者に対する外科手術は患者予後に貢献している一方で、腫瘍の転移・再発を促進させる因子であると報告されている。外科手術で使用される麻酔薬が腫瘍細胞に与える影響については、未だ不明なことも多い。 一方、サブスタンスP(以下SP)は様々な病態と深く関与する神経ペプチドであることが知られており、特に手術侵襲により誘発される炎症や疼痛などにも関連している他、癌再発促進に関わる免疫抑制や腫瘍血管新生に対しても影響している事が報告されている。 我々は、ヒト星状膠腫細胞U373MG 細胞株を用いた実験系において、SPが腫瘍細胞に及ぼす影響と、ケタミンが炎症に与える影響について検討した。 その結果、SP刺激により細胞増殖が惹起されたことを確認した。またSP刺激によるmitgen activated protain kinases(MAPK;ERK1/2, p-38, JNK)のリン酸化は、ケタミン濃度依存的に抑制されることが示された。また、これらのケタミンの作用は、NFKBのリン酸を抑制することに起因していることが示唆された。 以上より、ケタミンは、SP受容体を介するシグナル伝達系を抑制することにより、抗炎症作用を発現する可能性が示唆され、腫瘍の転移・再発に何らかの影響を与えるものと考えられた。
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