研究課題/領域番号 |
23592266
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
内野 博之 東京医科大学, 医学部, 教授 (60266476)
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研究分担者 |
濱田 隆太 東京医科大学, 医学部, その他 (20459572)
金子 恒樹 東京医科大学, 医学部, その他 (40617536)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 敗血症性脳症 / SAEモデル / ミトコンドリア機能不全 |
研究概要 |
敗血症性脳症(Septic Encephalopathy:SE)の脳障害発症機序は特定されておらず、その標的分子も明らかではない。本研究では、虚血性神経細胞死解析実験で蓄積されたMPT(Mitochondrial Permeability Transition)に伴うミトコンドリア機能不全に対する成果を新規脳保護法確立のためにSEのメカニズム解析に展開し、神経細胞障害のみに着目した従来の脳障害の解析からグリア細胞までも包含した脳内ミトコンドリア機能不全と敗血症で特徴的な末梢循環不全(microcirculatoion dysfunction)に伴う組織低酸素に焦点を置き、SEの実態をMPTとInt6・HIF2α情報伝達系との連関解析に展開することを目的した。この試みは、SEのメカニズムに新しい解釈を加え、この解釈を基に、新規の防御法の開発、麻酔科学・蘇生学・神経集中治療医学領域での安全性と信頼性を高めることを目指す。本年は、敗血症性脳症誘発とMPTを介した脳内ミトコンドリア機能不全の連関解析を行った。(CLP)誘発敗血症性脳症モデル(SAEモデル)を用いて、24時間後に脳ミトコンドリアのswellingの状況をCa2+overloadによって分析した。SAEモデルでは、24時間後には脳はかなり浮腫状となっており、swellingもコントロールに比較して誘発されやすい状況であることが判明した。このことから、SAEモデルに伴うミトコンドリアの膨化が、SEの病態形成に重要な役割を担っていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度は(1)敗血症性脳症誘発時の脳内での経時的なHIF2α発現の分布、局在と脳血流の経時的変動解析と(2)Int6-siRNA投与が敗血症性脳症誘発のapoptosis/necrosisと脳内神経栄養因子(Brain Derived Neurotrophic Factor:BDNF)の発現に及ぼす影響の解析を予定したが、SAEモデル作成が安定するまでに時間を要したため2つの実験家格遂行が遅れる形となった。また、抗体による免疫染色がうまく行えず、HIFならびにBDNFの変動において明らかな結果を見いだせなかった。そのため、平成24年度においてこの2つの研究課題を再度施行する。
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今後の研究の推進方策 |
(1)敗血症性脳症誘発時の脳内での経時的なHIF2α発現の分布、局在と脳血流の経時的変動解析 第8―10週令の雄性Wister ratを用いてCLP誘発敗血症性脳症モデル(SAEモデル)を作製する。モデル作製1、6、12時間後、1日後(各時間とも5匹の動物を使用)に脳の凍結切片(25μm)を作製し、HIF2αを用いた免疫組織化学的解析を施行し、脳内低酸素性誘導因子の発現や分布の相違を比較する。また、レーザードップラー血流計で大脳皮質の血流(測定位置:Bregma 3.5mm後方、4.5mm側方)を同じ解析時間に脳を取りだす前に測定する。さらに、脳切片をGFAPやNeuにて二重染色を行い、SEが脳内Int6・HIF2α情報伝達系および脳循環に及ぼす影響を解析する。(2)Int6-siRNA投与が敗血症性脳症誘発のapoptosis/necrosisと脳内神経栄養因子(Brain Derived Neurotrophic Factor:BDNF)の発現に及ぼす影響の解析 予めBBBをneedle lesionで破壊した第8―10週令の雄性Wister ratを用いて(CLP)誘発敗血症性脳症モデル(SAEモデル)を作製し、モデル作製1時間後に外頚動脈からInt6-siRNA発現ベクター(Int6-siRNA導入群)とネガティブコントロールベクター(NC導入群)を200μg投与(各群どちらも5匹ずつ)し、モデル作製6、12、24、時間後(各時間とも3匹の動物を使用)に脳の凍結切片(25μm)を作製し、大脳皮質と海馬CA1錐体細胞のApoptosisおよびNecrossisと脳内神経栄養因子(Brain Derived Neurotrophic Factor:BDNF)発現の変動を免疫染色にて検討を行い、敗血症の脳apoptosis・necrosisとBDNF発現に及ぼす影響を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度の研究費は、実験動物(ラット代と餌代等を含む)実験用器具(実験用備品)薬品(抗体、染色試薬、siRNAキット、遺伝子導入試薬、その他試薬を含む)に対して使用する予定である。今回の研究費のほとんどは消耗品に使用する予定である。
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