研究課題/領域番号 |
23592266
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
内野 博之 東京医科大学, 医学部, 教授 (60266476)
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研究分担者 |
濱田 隆太 東京医科大学, 医学部, 助教 (20459572)
金子 恒樹 東京医科大学, 医学部, 助教 (40617536)
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キーワード | 国際研究者交流 スエーデン / 敗血症 / マウス / ラット / ミトコンドリア機能不全 / 敗血症性脳症 |
研究概要 |
平成24年度は①敗血症性脳症(SE)誘発とMPTを介した脳内ミトコンドリア機能不全の連関解析と②敗血症性脳症(SE)誘発時の脳内ミトコンドリアCalcium Retention Capacity(CRC)の変動解析について検討を加えた。第8―10週令の雄性Wister rat(体重250-300g)を用いて回盲部結紮+2回穿刺による(CLP)誘発敗血症性脳症モデル(SAEモデル)を作製し、モデル作製12時間後、1日後(各時間・両群とも5匹のラットを使用)にラット大脳ミトコンドリアを抽出してCa2+overloadをin vitroにて作り出し、ミトコンドリアの膨化(swelling)を計測、解析比較した。Ca2+ overloadに伴うMPTによるミトコンドリアの膨化率を測定したが、SAE群においてsham群に比較してswellingを起こしやすい傾向が認められた。 また、第8―10週令の雄性、第8―10週令の雄性Wister rat(体重250-300g)を用いてSAEモデルを作製し、モデル作製1、6、 12、24時間後に脳内ミトコンドリアを抽出してミトコンドリアのCa2+取りこみ(Calcium Retention Capacity:CRC)能を測定するために200nmolCaCl2を10mM/分で持続投与し、蛍光色素のFura6Fを懸濁液に加え509nmで励起してSEが脳内ミトコンドリアCa2+取りこみ能とMPTに与える影響についてSEとMPTに伴うミトコンドリア機能不全との連関をCRCに焦点を当てて評価した。CRCはSAE作製後より経時的に低下し、6、12,24時間で有意な取り込みの低下を示した。 本年度に施行した解析結果から、従来不明とされていた敗血症性脳症の発症には脳内ミトコンドリアにおけるCa2+取り込み能の低下が原因が深く関与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
敗血症性脳症(Septic Encephalopathy:SE)の脳障害発症機序は特定されておらず、その標的分子も明らかではない。本研究では、虚血性神経細胞死解析実験で蓄積されたMPT(Mitochondrial Permeability Transition)に伴うミトコンドリア機能不全に対する成果を新規脳保護法確立のためにSEのメカニズム解析に展開し、神経細胞障害のみに着目した従来の脳障害の解析からグリア細胞までも包含した脳内ミトコンドリア機能不全と敗血症で特徴的な末梢循環不全(microcirculatoion dysfunction)に伴う組織低酸素に焦点を置き、SEの実態をMPTとInt6・HIF2α情報伝達系との連関解析に展開することを目的した。この試みは、SEのメカニズムに新しい解釈を加え、この解釈を基に、新規の防御法の開発、麻酔科学・蘇生学・神経集中治療医学領域での安全性と信頼性を高めることを目指す。これまでに、研究代表者は、①敗血症性脳症誘発時の脳内での経時的なHIF2α発現の分布、局在と脳血流の経時的変動解析②敗血症性脳症誘発とMPTを介した脳内ミトコンドリア機能不全の連関解析③血症性脳症誘発時の脳内ミトコンドリアCalcium Retention Capacity(CRC)の変動解析の観点から解析を施行して来た。これらのアプローチにより、これまで不明とされてきたメカニズムに一石を投ずる結果を得ることができたと考えている。その一方で、本研究計画が当初より遅れている理由として、SAEモデルを安定して作成することが難しいという局面もあり、結果が安定しないことがある。そのため、慎重な解析が必要となる。
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今後の研究の推進方策 |
SAEモデルを安定して作成することが難しいという局面もあり、結果が安定しないことがある。そのため、慎重な解析が必要となる。これらの問題を克服するためにマウスSAEモデルを作成して同様実験を行う。ただし、個体が小さいため、一回の実験に必要なミトコンドリア量が十分に確保できないためかなりの数の個体を必要とする。 今回の研究計画では、SE誘発に関与すると思われるMPTに伴う脳内ミトコンドリア機能不全とその役割を明確にするために以下の3点を出来るだけ解析を行う予定である。①SAEモデルを用いてSE発症と脳内ミトコンドリアにおけるCypDとの連関解析④SAEモデルに対してCypD 抑制剤の効果と脳内ミトコンドリアの酸素代謝(RCR)を解析し、SEとMPTとの連関を検討⑤SAEモデルに対して脳内ミトコンドリアのCa2+取りこみ能(CRC)を測定し、SEがCRCに及ぼす影響を解析しSEとMPTとの連関を検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
最終年度は、限られた時間の中で、SE誘発に関与すると思われるMPTに伴う脳内ミトコンドリア機能不全とその役割を明確にするために解析を行う。研究代表者および2名の共同研究者および海外の研究連携者の協力を得て、SE発症のメカニズムの解明に努力をしていきたい。平成25年度(最終年度)は、計上される研究経費から消耗品費として実験器具(ガラス器具、染色用器具)や薬品(抗体、染色試薬、siRNA作成キット、その他試薬)を計上したいと考えている。さらに実験動物は2つの実験計画を進める上で約50匹前後のラットが使用される見込みである。動物代にラットの維持費(餌代等)を計上したい。さらには、研究成果発表のため旅費(国外)を計上したいと考えている。以上本研究計画遂行には応募する研究経費は妥当であり、その遂行において計上した予算の必要性を積算根拠に基づいて述べた。付記するに、本研究遂行に辺り設備備品費、旅費、謝金が研究経費の90%を超えることはない。
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