本研究の目的は虚血再灌流障害耐性が弱いとされている脂肪肝に対する運動トレーニングの改善効果の有無を明らかにすることである。初年度はex vivo摘出灌流肝臓に虚血再灌流(Ischemia reperfusion :IR)障害を惹起させて実験モデルを確立し、運動トレーニングの効果を検討した。昨年度はin vivo麻酔下ラットにIR障害を惹起させる実験モデルを確立した。本年度は運動の効果をin vivoで検討した。肥満ラットはOLEPFラットを、その対照として非肥満ラットにはLETOラットを用いた。実験は①肥満運動IR群②対照運動IR群の2群において行った。それらの成績を前年度の非運動群との成績と比較した。ラットを麻酔開腹下に肝臓葉の70%に相当する左葉と正中葉の基部を門脈と肝動脈をメタルクレンメで閉塞して虚血を惹起する。1時間後に閉塞を解除する。再灌流後2時間観察する。運動はトレッドミルで、速度と持続時間を漸増して5週には23m/min、40分間を負荷した。肝障害は①血中ALT濃度、②胆汁流量、③ドップラー組織血流計による肝組織血流量、④肝組織像に基づいて評価した。運動群において肝組織像では非運動肥満群でみられた脂肪肝が認められなかった。運動群ではIRによりALT濃度は非運動肥満群でみられた増加が有意に抑制された。さらに、肝組織血流量の減少も運動群では抑制された。しかし、対照群の非肥満ラットにおいては運動群と非運動群との有意差は見られなかった。一方、胆汁流量はIR群間には有意差はなかった。さらに、肝血管抵抗の上昇並びに肝重量の変化もIR群間には有意差はなかった。以上より、運動により肥満ラットでみられた肝逸脱酵素ALT並びに肝組織血流量を指標とする虚血再灌流による肝障害は抑制された。
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