研究課題/領域番号 |
23592273
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山下 創一郎 筑波大学, 医学医療系, 講師 (10455933)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 高次機能障害 / 拘禁ストレス / 手術 / spatial working memory / マイクログリア / IL-1β |
研究概要 |
入院などにともなうストレスや加齢によりマイクログリアが活性化すると、手術侵襲にともなう脳内の炎症反応が促進され、術後の高次機能障害(Postoperative cognitive dysfunction:POCD)が発症しやすくのではないかとの仮説に基づき、3~6ヶ月のオスのFisher344ラットを6群(コントロール、手術のみ、拘禁ストレス30分+手術、拘禁ストレス120分+手術)に分け、術後1日目にY-mazeを用いてspatial working memoryを調べた。 その結果、novel entryに入った頻度は、コントロール、手術のみ、拘禁ストレス30分+手術、拘禁ストレス120分+手術ではそれぞれ63、38、55、41%だった。n=3ずつであるため、P<0.05であるのはコントロール群と拘禁ストレス120分+手術群の間しかなかった。しかし、手術のみ群がコントロール群よりもnovel entryに入った頻度が低い(38% vs. 63%)にもかかわらず、手術の前に拘禁ストレス30分を加えた群では手術のみ群に比べてnovel entryに入った頻度が高い(55% vs. 38%)という結果が得られた。 これは、海馬のIba-1の免疫染色の結果とも一致しており、手術のみ群はコントロール群よりもマイクログリアが活性化しているが、手術の前に拘禁ストレス30分を加えた群では活性化が認められなかった。我々の仮説とは反対の結果であるが、もしかすると若年ラットでは、短時間の拘禁ストレスに曝されるとその後の手術侵襲にともなう脳内の炎症反応に耐性を生じるのかもしれない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究では、高次機能障害の測定手段を当初Morris water mazeで行う予定であったが、多少ともaversiveなテストであるため、ストレスの影響を出来る限り排除するという観点からY-mazeに変更した。 また、加齢ラットに関しては、リタイアラットを購入して1年以上飼育してからでないと実験にうつれないためまだスタートできないでいる。このような、若干のプロトコールの変更と加齢ラットの問題から研究の進捗は遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は若年ラットに関して引き続き実験を行い、加齢ラットに関しては条件が整い次第(20週以上まで飼育)実験を開始したいと考える。しかし、加齢ラットに関しては1年程度の飼育が必要なことから、今後2年以内に加齢ラットの高次機能障害発生に対するminocyclineと17β-estradiolの効果を詳細に検討するまでには至らない可能性が高い。 また、若年ラットに関しては、現在のところ仮説と反対の結果が得られる可能性がある。もし、術前の短時間の拘禁ストレスが、その後の手術侵襲にともなう高次機能障害を減弱させるという結果得られたならば、若年ラットの高次機能障害発生に対するminocyclineと17β-estradiolの効果を調べることよりも、その機序を解明したいと考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は、当初の計画通り、ラットの購入、試薬や抗体など実験に必要な消耗品の購入に充てられる予定である。
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