最終年度である平成25年度は正常ラットおよび糖尿病性神経障害性痛モデルラットの脊髄スライスから後根刺激により誘発される細胞内Caイメージングを行い、プレガバリンおよびガバペンチンの脊髄後角細胞全体に対する作用を検証した。その結果、正常および神経障害性痛モデルの両方において、少なくとも臨床濃度においてはプレガバリン・ガバペンチンは共に有意な抑制作用を示さないことがわかった。平成23・24年度は脊髄後角細胞からパッチクランプ記録を行い、後根の電気刺激で誘発される単シナプス性興奮性シナプス後電流の振幅を正常および神経障害性痛モデルの両方において減少させないこと電気生理学的に明らかにした。この結果は平成25年度のCaイメージングのデータと一致するものである。以上の結果から、プレガバリンやガバペンチンは正常および神経障害性痛モデルの両方において一次求心性線維終末からのグルタミン酸放出には作用しないものと考えられる。従って、以前から考えられていたシナプス前終末の電位依存性Caチャネルを抑制するという作用機序仮説は否定的であり、末梢神経障害によって過剰に興奮している電位依存性Caチャネルを抑制するという仮説も否定的となった。本研究ではプレガバリンやガバペンチンの作用機序を明らかにすることはできなかったが、少なくとも脊髄後角の一次求心性線維終末レベルでは神経障害性疼痛に対する鎮痛作用を持たないことを明らかにした点で意義があると考えられた。
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